世界で最も人気のコンテンツ管理システム(CMS)であるWordPressを使用し、サブスクリプションサービスを作る方法を紹介します。
ブログ、E-コマース、ランディングページ、ブッキングサイト、求人サイトなどなど幅広いタイプのウェブサイトを構築できるので、WordPressは非常に便利なプログラムです。
W3Techsによると、WordPressはCMSを使用していないもの、CMSを使用しているものなども含めて、インターネット上すべてのウェブサイトの34%を占めています。
言い換えれば、WordPressを採用しているウェブサイトの割合はウェブサイト全体の3分の1のもなるのです。
これは、多くの人が使っていることで知見が集まりやすい事を意味します。
今回紹介する方法は、To B向けSaaSや数万人規模の顧客で構成されるサービスには向かず、どちらかといえばスモールビジネスでサブスクリプションサービスを作りたい人に向けたものとなります。
また、DjangoやLaravel、Rails、Reactなどを使用してウェブアプリケーションを構築する予定である事業者が、PMF(プロダクトマーケットフィット)するまでWordPressにより簡易展開するのにも使えると思います。
サブスクリプションサービスとは
サブスクリプションサービスとは、決められた期間でユーザーから課金を受け、課金された期間サービスを提供するものをいいます。
例で言えば、Netflix、Spotify、Kindle Unlimited、Tinder、Photoshop、家賃などです。
これらのサービスは、指定期間ごとに定額を請求し、定期支払いすることでユーザーはサービスの使用を享受できるというものです。
サブスクリプションサービスを、ユーザー側、事業者側ともにメリットを示します。
ユーザー
- 一括決済すると高価なものを分割することで安価に利用できる
- 支出計画が立てやすい
- モノを購入しなくて良い
- 勝手にアップデートしてくれる
- その時の需要に柔軟
事業者
- 定額✕サービス料金=売上なので事業計画が立てやすい
- 随時機能をアップデートできる
- ユーザーの声を拾いやすい
- ユーザーを満足させることが売上アップになるので、良いプロダクトを作ることに集中できる
といった事が挙げられます。
所有権から使用権へ、という言葉が流行していることから分かるように、モノを購入するよりもサービスとして使用することに価値を置いている人が多いように思えます。
したがって、何かを販売する際に、売り切りモデルを取るのか、サブスクリプションサービスを取るのか、その事業の性質にもよりますが、選択肢の1つとして入れた方が良いことは明白です。
WordPress ✕ サブスクリプションサービス
では、扱いやすいWordPressを用いてサブスクリプションサービスはできないのか。
答えから言えば、できます。
WordPressには、E-コマースを構築できる拡張機能でWoocommerceというものがあります。
サービスの定期決済は商品の購入とイコールなので、サブスクリプションパッケージをWoocommerceで販売してしまえば良いのです。
今回はタイトルにつけている通り、無料で構築する方法を紹介します。
Woocommerceとは
WooCommerceは、WordPressに構築されたオープンソースのE-コマースソリューションです。
ビジネスを始める場合、既存のオンラインストアを継承する場合、顧客のサイトを設計する場合などと使用の自由度が高い設計なため、すぐに着手し思い通りのストアを開設できます。
WordPressを主体となって開発しているAutomattic社がWooCommerceを開発しているので、コードの安全性もある程度担保され互換性は問題ありません。
設置方法は簡単で、WordPressサイトで無料のWooCommerceプラグインを有効化し、オプションのガイドツアーに従うだけ。
オンラインストアが数分で完成します。
税率や配送料金などを設定すれば、決済画面で自動計算してくれるなど、簡単で便利かつ高機能なものとなっています。
WooCommerce Subscriptions
WooCommerceでサブスクリプション商品を販売するときに必要となるのは、「WooCommerce Subscriptions」というプラグインです。
ただし、このプラグインは有料であり決して安いものではありません。
余談ですが、WooCommerce Subscriptionsの開発元であるProspressはAutomatticが買収したので、今後機能や価格が変更されるかもしれません。
執筆時点で、最新バージョンは2.5.6となっています。
価格はサイト毎のライセンス制で、1年のアップデートとサポートが保証されます。
- 1サイト:$199.00
- 5サイト:$249.00
- 25サイト:$399.00
可能な決済手段は以下の通りです。
日本では、PayPalとStripeを使用すれば良いだろう(Amazon Payは決済手数料が高い)。
決済サービス | 停止 | キャンセル | 最有効化 |
---|---|---|---|
Amazon Pay | ○ | ○ | ○ |
Authorize.net CIM | ○ | ○ | ○ |
Bambora | ○ | ○ | ○ |
Chase Paymentech | ○ | ○ | ○ |
Elavon Converge | ○ | ○ | ○ |
eWay | ○ | ○ | ○ |
FirstData | ○ | ○ | ○ |
GoCardless | ○ | ○ | ○ |
Intuit | ○ | ○ | ○ |
Merchant Warrior | ○ | ○ | ○ |
Moneris | ○ | ○ | ○ |
NAB Direct Post Gateway | ○ | ○ | ○ |
Netbanx | ○ | ○ | ○ |
NETbilling | ○ | ○ | ○ |
PayFast | ○ | ○ | ☓ |
PayPal Checkout | ○ | ○ | ○ |
PayPal Digital Goods | ○ | ○ | ○ |
PayPal Powered By Braintree | ○ | ○ | ○ |
PayPal Reference Transactions | ○ | ○ | ○ |
PayPal Standard | ○ | ○ | ○ |
PayTrace | ○ | ○ | ○ |
Peach Payments | ○ | ○ | ○ |
Pin Payments | ○ | ○ | ○ |
PsiGate | ○ | ○ | ○ |
Realex | ○ | ○ | ○ |
Realex HPP | ○ | ○ | ○ |
SagePay Direct | ○ | ○ | ○ |
Sage Payments USA | ○ | ○ | ○ |
SecurePay Direct Post | ○ | ○ | ○ |
Stripe | ○ | ○ | ○ |
TrustCommerce | ○ | ○ | ○ |
Wirecard | ○ | ○ | ○ |
WorldPay | ☓ | ○ | ☓ |
では、どう考えても有料になりそうなWooCommerce Subscriptionsを無料で使用する、裏技的なことを教えたいと思います。
最新版で常にアップデートしなければならない方は、おとなしく199ドル以上払ってプラグインを購入してくれれば良いです。
さて、複数人で行うプロジェクトのコードを管理するサービスに、Githubというものがあります。
もう、お気づきの方もいるでしょう。
WooCommerce SubscriptionsのミラープログラムがGithubで無料公開されているのです。

せっかくご好意で無料公開されているのです。
ありがたく使わせてもらおうじゃありませんか。
緑色になっている「Clone or download」をクリックし、「Download ZIP」からダウンロードします。
ダウンロードしたZipファイルをプラグインの新規追加からアップロード、または解凍してFTPクライアントからドラッグ&ドロップでアップロードします。
アップロードできたら有効化するだけです。
もうサブスクリプションサービスを販売する準備は整いました。

機能
設定方法は簡単です。
プラグインは日本語化されていないので、多少英語を分かる必要はありますが、Google Chromeの翻訳機能を使えば問題ないです。
商品の新規追加の際、商品データで「基本的な商品」となっている所を、WooCommerce Subscriptionsを有効化されることで表示される「Simple Subscription」あるいは「Variable Subscription」で設定します。

基本的に、サブスクリプションプランはあまり多く作ってもユーザーが混乱し、また管理も大変になるので「Simple Subscription」のみを使用することになると思います。
WooCommerce Subscriptionsでできることを挙げてみます。
フリートライアル、無料登録

初期金額を請求して顧客の設定費用を計上したり、サブスクリプション料と無料試用版を製品に追加し、実使用の前にテストできるようにできます。
サブスクリプションの管理

管理画面から「WooCommerce > Subscription」でサブスクリプションを管理できます。
一時停止、キャンセル、試用期限の変更、商品を追加、配送料、手数料、税金、決済周期の変更など、基本的な設定はすべてWordpressの管理画面から行えます。
アップグレード、ダウングレード

顧客が異なるサブスクリプション製品間でアップグレード、ダウングレードできます。
支払い周期の設定

月の特定の日にのみ出荷したり、すべての顧客で同じ会員期間を設定するなど、サブスクリプションの更新同期機能を使用できます。
柔軟な製品オプション

サブスクリプション商品を作成するときは、ダウンロード可能製品、バーチャル製品、物理製品、毎週、毎月、毎年、商品は顧客1人に限定、初回注文時のみ配送料を請求するなど、柔軟なオプションがあります。
複数のサブスクリプション

顧客は同じトランザクションで異なるサブスクリプション商品を購入することもできます。
クーポン

サブスクリプションに定期割引クーポンや登録クーポンを追加できます。
メール

サブスクリプションの支払いが処理されたとき、キャンセルされたとき、期限切れになったときなど、顧客へ自動的にメールを通知します。
まとめ
簡単にWordpressでサブスクリプションサービスを展開する方法を解説しました。
WooCommerce Subscriptionsは、基本的に求められるサブスクリプション機能を概ね満たしており、「事業立ち上げ時」や「すでにWooCommerceで商品を販売している人が新たなパッケージ追加する」などを迅速に展開できます。
流行りのオンラインサロンなども、オンラインサロンの構築サービス(DMMやCampFireなど)に手数料を払わず構築できるようになるでしょう。
僕はスモールビジネスが好きなのですが、この記事の見て、コーヒーの定期配送を始めてみたり、まともなオンラインサロンを始めてみたり、動画教材の見放題サービスを始めてみたり、アパレルのレンタル事業を始めてみたりなど、事業者の売上げアップ&新規事業の創出に貢献できたら幸いです。
*注意事項
- 決済手段としてPayPalやStripeを使うことになるので利用規約をよく読んでおこう。
- ドメイン代やサーバー代に費用がかかるのは当たり前すぎるので無料として考慮していない。