特に公言しているわけではないが、僕はおそらくビットコイナーに分類される。
なぜなら、その他ブロックチェーンと言われるものへ関心を持っているものの、ビットコインほどではないからだ。
さすがに、ビットコイン一筋で、それ以外は邪道というマキシマリストほどには至らないが、ビットコインというものを強く『信用』している1人というわけ。
では、なぜ僕はビットコインを信用しているのだろう。
それは、『信用がいらない』からだ。
そして、信用がいらない、つまり『トラストレス』であることが、僕は最も面白いと感じているポイントである。
トラストレスの定義は人それぞれあるだろが、僕は取引に際する信用が極めて小さいことだと考えている。
ビットコイン自体はここ10年ほどで出来たもので、用いられている要素は、さして新しいものではない。
新しいアルゴリズムを用いることで、何かを解決しようとするプロジェクトが多い中、ビットコインはすでに確立されている既存技術をうまく組み込み(PoW)、経済合理性が働きやすいプログラムにインセンティブを組み込んでいる。
そして、ビットコインの世界では、全ての人間が、公平で同じ立場にいる。
この記事では、僕がビットコインを面白いと感じている理由について書いてみる。
結論、『分散性』という言葉に帰着するのではないかと思う。
- 「ビットコインてどうなんですか?」
- 「ビットコインやってますか?」
- 「ビットコインてまだあるんですか?」
こういった、非常に抽象的な質問をぶつけてしまう方にも役立つことと思います。
なお、僕は金融のプロではないし、経済の博士号を持っているわけでもありません。ついては、勘違いや齟齬などがあると思います。
ぜひ、ご指摘いただければと思う。
発行体がいない
ビットコインには発行体がいない。
これはどのようなことか。
まず、皆が手にしている「諭吉」や「栄一」は、日本の中央銀行が発行しているものだ。
これは、米ドルであればアメリカの連邦準備銀行(FRB)だし、ユーロであれば欧州中央銀行(ECB)である。
つまり、貨幣の流通は国が管理しているので、貨幣の価値やリスクは国の評価になる。
日本円の金利は非常に低く、また自然災害(地震など)が発生すると買われる。
これは、簡単にいえば、日本円と日本の信用が高いことを意味している(厳密には海外資産としてあるドルを売り円を買うからではあるが)。
日本の将来を日本人は悲観するが、投資家はリスクオフになると円を買う傾向にあるのは紛れもない事実。
しかし、トルコやアルゼンチン、ベネズエラ、ジンバブエといった国では、法定通貨の信用力が非常に低い状態にある。
このように、国の信用力や経済政策で、貨幣の価値というのは操れてしまう(簡単ではないが仕組み的に)。
また、通貨を発行する元は、通貨発行益を得ることもできる。利権が発生する箇所に腐敗が生じるのは、人間社会の常だ。
繰りかえすが、ビットコインには発行体がいない。
では、どのように流通しているのだろう。
それは、プログラムに基づいて新規発行され、データとして記帳されていくのだ。データの記帳は、コンピューターの計算で行われるのみである。
そして、全てプログラムで稼働するため、変更を行うことは非常に難しい。
プログラムで稼働し、人間の意思が介在していないことが持つ意味は何か。
すでに述べたが、人間は、権力や政治力を持つと基本的に腐敗する。
法定通貨を発行するのは、権力ある団体とその人間だ。
なるべく、安定させよう発展させようと、金利や発行額を決定していくわけで、法定通貨が便利であることには間違いない。
しかし、腐敗した政府から身を守るため、発行体のいないアセット、つまり資産をポートフォリオにいれていくのは、選択肢の一つにいれ良いのではないかと、僕は考えているのである。
どの世界でも同じである
米ドル、日本円、ユーロ、ポンド、スイスフラン。
これらは各通貨が流通している市場で機能するものの、他国では簡単に利用できないかもしれない。
米ドルは石油取引に用いられていることや、植民地支配の成果もあり、世界各国で使用できる確立は高いが、勿論全ての国では使えない。
実際、為替市場としては大きいものの、日本円は基本的に日本でしか利用できないのは想像に容易い。
ところが、ビットコインはどこかの国が発行しているわけでなく、単なるプログラムなので、どの国にいっても単位は同じ。
カザフスタンでもパプアニューギニアでも、ブルキナファソでも、話題のレバノンでも、『1BTCや1satoshiは、1BTCや1satoshi』である。
ビットコインは、わずか10年ほどしか稼働していない金融システムだ。
したがって、どの国でも使用できたり、別のアセットと交換できたり、レートが近しいわけではない(取引量でスプレッドに差が出るのは当然)。
ただし、単位が共通であることに変わりはない。
ある国で1BTC持っており、移動したからといって減価しないのだ。
ソフトウェアである
ビットコインはソフトウェアである。
Cryptocurrencyすなわち暗号通貨で、仮想通貨だったり、暗号資産だったり、デジタル通貨と呼ばれることもある。
確かに通貨と名付けられていることから、通貨として使用できる。しかし、ビットコインで税金を支払える地域は非常に少ないため、一般に普及する通貨としては機能しないだろう。
https://japanese.engadget.com/2018/11/25/bitcoin/
前置きが少し長くなったが、ビットコインはただのプログラムであり、好きな人間がP2Pネットワークへ勝手に参加しているだけ。
オープンソースのP2Pネットワークなので、誰もソフトウェアを管理していないが、参加している全ての人で管理しているとも言える。
Githubを見てみてほしい。
プログラムは、指定された事が言語として記述され、言語化された命令を忠実に実行し続ける。
ビットコインは、通貨としての機能を持つ、ただのプログラムだ。
特定の人間の意思が介在しないことは、その他通貨と肩を並べる際の比較材料として、とても重要だと思う。
供給量に限りがある
ビットコインには、2100万BTCという最大供給量がプログラムで決定されている。
法定通貨が、年x%を目標にインフレさせていき、流通・存在する通貨の総量が増加し続けるのとは逆だ。
供給量に限りがあるものは、いずれ尽きる。
手にできる可能性は継続的に低くなり、また難しくなる。入手困難で、限りがある資源は、基本的に値上がりするモデルとして予測できるはず。
まさに、ゴールドまたは金のようなものである。
このことが、ビットコインはデジタル・ゴールドと呼ばれたり、値動きが原油と似ていたりする所以だと思う。
いつまでも降ってくるモノより、限りあり、年々入手しずらくモノの方が、長期的に値上がりする可能性は高い。
そして、金や原油のように、探せばあるかもしれないという可能性としての限界ではなく(埋蔵量の予測)、ビットコインは供給量と供給スケジュールがプログラムで指定されている。
変更は、容易でない。
適度な流動性がある
ビットコインは、暗号通貨と呼ばれるもののなかで、最も流動性がある。
以下のグラフを見てみると、ビットコインは暗号通貨の総時価総額で約68%を占めており、また約1294億ドル、つまり約14兆円が流通していることになる。
取引の大半は米ドルステーブルコインのTetherや米ドル、ユーロ、日本円、ポンドなどで行われているようだが、これらは取引所での売買代金に基づいたデータであり、正確な数値は出せない。
なぜなら、実際に、人と人が会い両替を行うような対面取引や、OTC取引は含まれていないから。
対面でビットコインと法定通貨と取引する人物をマッチングさせるサービスに、Localbitcoinsというものがある。
このサービスで、どれだけ取引が行われているかはCoindaceで見ることが可能だ。
中南米や中東の国でも、比較的取引が行われているだろうことを確認できるはず。
移動に許可がいらない
ビットコインの送金は、実のところ、どこかへ送っているわけではない。
あるアドレスに記録されていたデータを、他人のアドレスへ記録するだけである。このデータが改ざんできないよう、マイナーが取引を検証している。
物理的なモノを運ぶわけではないビットコインは、国際送金が非常に楽だ。受け取る先の人物が、ビットコインを交換できるのであれば、本当に簡単である。
たとえば、日本から、距離的に正反対のブラジルへ、50億円分の資産を移動したいとしよう。
それぞれの状況によるのでなんとも言えないが、こういった高額の資金移動において、ビットコインは最も簡単であると僕は考えている。
銀行送金で50億円分をブラジルへいきなり送金してくれと言われても、AML/CFTだとかなんとかで許可されるには時間がかかるし、許可されてから送金実行までも時間がかかる。
現金で持ち込むのは、勿論物理的に厳しい。
これは、ダイヤモンドやゴールドでもそうだ。持ち込み時、税金が課されることもある。
ビットコインなら、ウォレットへ入れておくだけ。
これはハードウェアでも良いし、PCのクライアントソフトでも、紙でも、モバイルウォレットでも良い。
最終的に、秘密鍵とウォレットをロックするパスワードさえ控えていれば、容易にどこでも持ち出せ、送金できる。
そして、上述しているように、ある程度の流動性を見込めるので、換金性も高い。
政府や金融機関が、送金を止めらることは、まず出来ないから。
まとめ:分散性
ここまでで、ビットコインが面白いと思う理由を簡単に述べてきた。
いずれも、分散性という言葉でまとめることが出来る。
検証に大きなコストのかかるシステムは、ブロックチェーンによって、大幅に安価となる可能性がありる。これは、証券といった金融分野だったり、物流といったサプライチェーンだったりだ。
僕はマキシマリストではないので、ビットコイン以外のブロックチェーンはゴミだとか、残る可能性が無いとは思っていない。
そして、分野によっては、きちんと活用されていくことと思う。
しかし、『お金』というものは、最も改ざんされてはイケないもので、かつシンプルである必要があるはず。
ビットコインは、技術として新しいことを盛り込んでいないので、とても堅牢だ。
そして、ビットコイン以上に、誰も管理に関与しない暗号通貨は出てこないと予想できる。
横展開する場合も、高速な送金やマイクロペイメント、スマートコントラクトに代表される条件分岐したアプリケーションなどは、ビットコインのサイドチェーンやオフチェーンで実現可能。
ビットコインは、最も仕組みとして分散している通貨だということが分かったことと思う。
さて、今後、『ビットコインてどうなんですか』という質問は、出てこないといいな!