この記事では、ユーザーのプライバシー保護を配慮し、広告収益の分配のあり方を変えようとしている、Braveブラウザについて掘り下げていく。
はじめに
現在のウェブは汚されているなどと言われることもあり、個人情報は乱用され、ブラウジングで集めた個人情報データをもとにしたグローバル企業は莫大な利益を上げている。
これに関して筆者自身は否定する気はないのだが、それでも過剰にパーソナライズされていると感じる事は多々ある。

例えば、何かの製品を公式サイトで見たとしよう。次に、別のウェブメディアを閲覧すると、広告枠に先程みた製品の広告が表示されている。驚くほどのターゲティング精度だ。
では、これらの広告はどのように成り立っていのだろう。この記事では、Googleについて記載していく。
現状の課題
まず、ターゲティング広告を出稿している企業はGoogleに広告費を支払う。これは、Google広告というサービスを使用している。
広告主は、地域、性別、年齢、興味対象の属性、カテゴリー、時間、曜日、といった各項目をターゲットとなるユーザーに刺さるよう設定する。タイトルや画像、説明を記述し予算を設定すると、すぐに広告がウェブに出稿されるのだ。
広告費は広告がクリックされたら発生する仕組みで、予算をオーバーしないようGoogleは自動で掲載率や大きさをアルゴリズムにより調整している。
これらアルゴリズムは、整理された個人データを所有しているがゆえに為せる技である。

広告費の分配方法を説明しよう。
広告主が出稿した広告費は、一度Googleに支払う。広告はウェブサイトに表示されなければならないので、Googleはウェブサイトを所有している人やYoutubeに広告を表示させ、閲覧者が広告をクリックすると収益を与えるシステムを構築した。これは、Google AdSenseというサービスを利用する。
つまり、マネーフローは『広告主 => Google => コンテンツ作成者』となっている。
図にすると、以下のようになる。

つまり、頂点に立つのはプラットフォーマーであるGoogleで、お金の収益分配は圧倒的にGoogleが強い。
もっとも川下にいるのが読者であり、最も強いのはGoogle。当たり前ではあるが、収益構造としてGoogleは強すぎるのだ。

資金と技術のあるGoogleがトップに居ることへ資本主義として何も異論は無いが、多くの人はこの力関係に不満を持っており、また広告を出稿する企業も満足な結果(費用対効果)を得られていないと感じている。
Braveとは
Braveは、上述した強すぎるプラットフォーマーを排除しようとする企業である。提供しているサービスに、ウェブブラウザと関連する報酬プラットフォームがある。
個人情報を基にしたブラウジング履歴から紐解く興味対象の特定は、プライバシー保護の正反対にいる。
Braveブラウザは、プライバシーを保護し、ブラウジングしているユーザーにも報酬を与えるべきであると考え、広告費による収益分配を変えようとしている。
具体的には、以下のような特徴がある。
速度

ChromeやSafariよりも最大8倍速い
Braveは、主要なニュースサイトをモバイルでChrome / Safariの2〜8倍、デスクトップではChromeの2倍の速さでロードできる。
データ量の削減

不要なコンテンツをダウンロードするデータ料金を排除
平均的なモバイルブラウザユーザーは、広告やトラッカーをダウンロードするために月額$ 23のデータ料金を支払っている。年間に換算すると$276だ。Braveは広告やトラッカーをブロックしているので、余計なデータ使用量を支払う必要はない。
アドブロックがデフォルト

Braveはデフォルトで不要なコンテンツをブロックする
人気のあるサイトは、複数の広告と最大70のトラッカーをホストしている。さらに、ほとんどの主要なアドブロッカーは、トラッカーがあなたの現在地、行動、その他の閲覧活動をプロファイルすることができている。
ブラウジングだけで報酬を獲得

報酬を獲得し好きなクリエイターへ還元できる
マイクロペイメントでお気に入りのサイトをサポートできる。Braveは、コンテンツ作成者に報酬を与えるためブロックチェーンベースのトークンを備えている。Braveをダウンロードすると20BAT程がもらえる(今もかは不明)。
プライバシーの保護

Braveは追跡するソフトウェアをブロックする
他のブラウザが提供する「プライベート」ブラウジングモードは、本当にプライベートではない。Braveでは「Tor付きのプライベートタブ」を含む多くのプライバシー保護機能が、トラッカーを阻止し、深いレベルで個人情報の保護を提供する。
機能一覧
シールド
- 広告をブロック
- 指紋防止
- クッキーの管理
- HTTPSへアップグレード
- スクリプトのブロック
- サイトごとでシールドを管理
- デフォルトはシールドが設定される
タブとウィンドウ
- プライベートウィンドウ
- 固定タブ
- 自動アンロード
- ドラッグアンドドロップ
- ページで探す
- 印刷ページ
アドレスバー
- ブックマークを追加
- 自動で推奨URLをローディング
- アドレスバーから検索
- 検索用語をオートサジェスト
- ブックマークツールバーの表示/非表示
- 安全なサイトまたは安全でないサイトを表示
セキュリティ
- 閲覧履歴データの消去
- パスワードマネージャを内蔵
- フォームの自動記入
- フルスクリーンプレゼンテーションへのコンテンツアクセスを制御
- 自動再生メディアを制御
- 閲覧リクエストと共に「追跡不可」を送信する
検索
- デフォルトの検索エンジンを選択
- 代替検索エンジンをショートカットで指定
- プライベートウィンドウにDuckDuckGoを使用するオプション
拡張機能
Brave Desktopは現在、Chrome Web StoreにあるほとんどのChrome拡張機能をサポートしている。
Basic Attention Tokenについて
Basic Attention Token(BAT)は、発行者、広告主、ユーザー間で交換できる新しいトークンを作成することによって、デジタル広告の効率を大幅に向上させる目的がある。Ethereumブロックチェーンで稼働する。つまり、BATはERC20トークンである。
トークンを使用すると、BATプラットフォーム上でサービスを利用でいるようになる。後に、Braveブラウザからギフトカードなどを購入できるようになるはずだ。トークンの有用性はユーザーの『注意』に基づいている。
現在のデジタル広告は、仲介業者、追跡者、詐欺行為が蔓延することで、非常に非効率的だという。
問題点は以下の通りで、BATはこれらの課題を解決することを目指している。
ユーザーは悪用されている
- 平均的なユーザーのモバイルデータは、最大50%が広告とトラッカー用で月額23ドルもかかる
- 広告は平均して約5秒のモバイル読み込み時間を使用している
- 広告はスマートフォンのバッテリー寿命を最大21%短縮している
- 大規模なメディアサイトでは最大70のトラッカーをホストされ、プライバシーは侵害されている
- マルウェア(不正転用や身代金)は1年間で132%増加している
出版社(パブリッシャー)は傷ついている
- グーグルとフェイスブックは、全広告収入の73%、全成長の99%を占めている
- 全体として、最近の収益は66%減っている
- 悪質なBotは昨年72億ドルの詐欺行為を行った
- 6億を超えるスマートフォンやデスクトップがアドブロックを実行している
- 出版社は付加価値あるサービスをシームレスに収益化することはできない
広告主は余計な費用を払っている
- 広告主は支払っている広告費について、より良い情報を欠いている
- マーケティング担当者は、偽のWebサイトやボットに詐欺行為を仕掛けられている
- ターゲティングは貧弱で、ユーザーは広告を無視する可能性が高い
トークンモデル
BATとBraveのトークンモデルは、以下のようになる。
ステージ1:Braveブラウザ
Braveは、悪意のある広告やトラッカーをブロックする、高速でオープンソースのプライバシーを重視したブラウザで、出版社を報いるために匿名でユーザの注意を引くブロックチェーンシステムが含まれている。
ステージ2:Basic Attention Token
Basic Attention Tokenは、パブリッシャー、広告主、ユーザ間で交換されるため、BATプラットフォーム上で様々な広告およびのサービスを取得するために使用できる。トークンの有用性は、ユーザーの『注意』から派生したもの、またはユーザーの『注意』を引いたものである。
ステージ1 + 2 =新規取引
Braveは、ユーザが時間をどこで費やすかを知っているため、報酬を計算してBATで報いるのに最適なツールとなる。これは、透明で効率的なブロックチェーンベースのデジタル広告市場を生み出す。仲介者や詐欺行為が減るため、出版社はより多くの収入を得ることができ、ユーザーはプライベートな広告をオプトインすると報酬を得ることができる。そして、広告主はより良いデータを得られる。
Braveブラウザはユーザーの『注意』を匿名で監視し、『注意』に応じてサイト運営者へBATを支払う。

このように、広告主、ユーザー、パブリッシャーの関係性は比較的対等であり、広告主が出稿した費用の70%はユーザーへ還元される。
チーム
Braveを創設したのは、JavaScriptの創設者であり、MozillaとFirefoxの共同創設者であるBrendan Eich氏。Propel Venture Partners、Pantera Capital、DCG、Danhua Capital、Huiyin Blockchain Ventureといったベンチャーキャピタル(VC)が資金を入れている。
考察
トークンのモデルを見る限り、やはりまともな人たちが運営しているだけあってワークしそうな印象を受ける。
基本的に消費しているトークンなので将来的な値上がりはあまり期待できない気もするが。。
筆者はGogle Chromeをメインブラウザとして使用しているが、その次に来るのはFirefoxとBraveである。BraveはChromeとおなじOSSのブラウザエンジンであるChromiumを使用しているので、プライバシー保護機能やクッキー&アドブロック機能、トークン内蔵機能を除けば、ほぼChromeと使い心地は変わらない。
Windows、Mac、Linux、IOS、Androidと全てのOSに対応しているので、この記事を読んだきっかけにBraveを使用してくれたら嬉しい。
ブロックチェーンとか、プライバシーとか、スクリプトとか、そういう難しい事を考えずとも、Braveはページ読み込み時間が速く快適なブラウザだ。
この『読み込みが速く快適』という理由だけでも、十分に使う価値はある。
BATに関して言及すると、多くのICOコインが地を這うような値動きをする中、以外と健闘している。これは、大手の取引所(Binance、Coinbase、Poloniexなど)が軒並み取り扱っていることで流動性がそこまで低くないこと、チームがしっかりしているので売られていないこと、などがあるかもしれない。
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