先日、イーサリアムベースの分散型予測市場であるVeil.coが閉鎖することを発表した。

これについて少し思うところがあったので、書いておく。

Veilとは

Veilは、オープンプロトコルに基づいて構築されたP2Pの予測市場だ。ベースとなるプロトコルに、Augur、0x、Ethereumがある。つまり、簡単にいえばイーサリアムネットワークで稼働する予測市場プロトコルのAugurに、0xのオフチェーン注文機能を加えたプロジェクト。

Augurは非常に洗練されたプロトコルであるので、そのAugurをもとに予測市場をアップデートしようとしたわけだ。

イーサリアムはスマートコントラクトプラットフォームであるとは言いつつもトランザクション処理性能は著しく低く、僕の記憶が間違いなければ15 TPS(Transction per Second:1秒辺りに処理できるトランザクション処理数)程度だ。

0xは、注文の処理をオフチェーンでプール化させることにより、目に見えるトランザクション処理が速くなる。この機能を採用し、Veilで注文の作成とキャンセルはチェーン外で行われることから、ユーザーはより快適にプラットフォームを使用できることを意図していた。

以下の画像では、『Who will win the 2020 Democratic presidential nomination?(誰が2020年の民主党大統領候補に勝つか?』というオーダーに、Kamala Harris、Joe Biden、Elizabeth Warren、Bernie Sanders、Pete Buttigieg、Andrew Yang、Beto O’Rourke、Tulsi Gabbard、Cory Bookerが予測市場に出され、賭けられていることが分かる。

もちろん、賭けをする通貨は法定通貨でなくDAIだ。DAIはイーサリアム上で発行される暗号通貨担保型のUSDペグコインで、1 USD = 1 DAIに近似するよう設計されている。

Veil
https://app.veil.co/market/2020-dem-nomination

Veilは2018年秋にPaul Fletcher-Hill氏、Feridun Mert Celebi氏、Graham Kaemmer氏によって設立され、ParadigmSequoia Capital、および1confirmationの支援を受けている。

予測市場とは

予測市場については以下の記事で解説しているが、何かのイベントに対して賭け、正解すると報酬を得られ、間違うと資金を没収されるという先物市場である。

予測市場の何が良いかというロジックはこうだ。

ユーザーは自分の資金を賭けており、正解すれば報酬を得ることができるので、イベントに対して詳細に分析を行い知力をぶつけるはずである。イベントに対して複数のユーザーが知力を結集させるので、そのイベントはユーザーが増えれば増えるほど信頼性の高い未来となる。

つまり、予測市場は1人という個人の信念ではなく多くの意見に依存している。大勢の人々は、一個人よりもはるかに多くの情報を全体として持っていると仮定できる。多くの人が能動的により多くの情報を集めようと努力し、金銭を得るためにより正確な結果を予想しようとする行為は、一個人の予想と比較しはるかに正確性が高くなる。

イメージしずらい人は、スポーツの勝敗にかけるギャンブルであるブックメーカーのような市場だと思ってくれれば良い。間違っても、ブックメーカー投資必勝法みたいなモノにはだまされないように笑。

提案

あらかじめ僕のポジションを言っておくと、分散型予測市場へ大いに期待している。未来のイベントに対して確からしい結果を予想できるのは、自分にとって得になるはずである。

また、賭けが分散化されることで政府等の規制当局から資金を没収されたり、プラットフォームに資金を持ち逃げされるリスクはなくなる。

一般的な人にとって、予測市場という概念は未だ浸透していない。そして、ビットコインといい名前を聞いた事がある人は世界中で数多くいるが、アカウントベースのイーサリアムで稼働する予測市場というものに辿り着ける人は、事実かなりの変態だ。

Veilは先陣を切って新しいことに挑戦してくれたのはすごいと思うのだが、残念ながら7月24日をもって取引が無効になる(サイトはホストされている)。

資金があると人は、Mediumを参照し撤回しておこう。

Mediumのポストを見ると、Veilがうまく行かなかった原因をPaul Fletcher-Hill氏が記載している。翻訳して紹介しよう。

  1. やり過ぎた。予測市場は賭け、デリバティブ、保険などで一般的な形式である。これらの分野いずれかに焦点を当てたバージョンは、一般的な形式よりもユーザーにとって優れていた可能性がある。
  2. 優れたオンボーディング(使い方などの手ほどき)を提供しなかった。ユーザーのベースとして暗号通貨はまだ初期段階にあり、コインやウォレットを持たないユーザーが予測市場を試してみるのを簡単にできなかった。
  3. 規制され分散化できていなかった。一部のユーザーは完全に分散化され誰にも止められないプロダクトを望んでおり、あるユーザーは規制されたプロダクトを望んでいる。人々が価値があると思うものの間で、何かを提供するのは難しい。

ようやくすると、『様々なイベントが作成でき(自由度が高い)』、『初心者が使いやすい導線ではなく(初心者向けではない)』、『分散化と規制の間に立たされていた(ポジションがなかった)』、ことが今回はうまく行かなかった原因であるとファウンダーは分析している。

つまり、ユーザーへ多くの選択肢を与えず初心者が簡単に理解できるUIで規制 or 分散化どちらかに振り切れば、より良くなる(ユーザーへ普及する)可能性があるかもしれないということだ。

予測市場は多くのユーザーが参加してこそ価値が出るので、参加者が増えない限りは本来ある価値を発揮できない。

日本で暗号通貨の発展というか、多くのユーザーへ広げた立役者は誰か。

僕はコインチェックであると思っている。

日本で「仮想通貨」を認知していたり触れたことがある人は多いと思うが、彼らは自分の資産は自分で管理するため最低限のセキュリティや暗号の知識を身に着け、ノードを同期させて取引を検証するなど高いITリテラシーを持ったギークではない。

コインチェックは、そもそも資産をデータベースに数字でつけ、足りなくなったらPoloniexなどで買い付け販売するという相対取引をしていただけなのだ。しかも、コインチェックで仮想通貨を購入したユーザーは、自分のウォレットで管理するべく送金せず、コインチェックに置いたままだった。一切、現物の仮想通貨には触れていない。

coincheck
超シンプルで難しさを感じさせない画面(UI)

また、一時期世界最大の賭博場と化したbitFlyerのLightning FXも、ビットコインの現物とは一切ない。極論を言うと、Lightning FXの価格は30億円でも1円でも、0円でも良いのだ。

だが、これで良いと思っている。

わかりやすいUIで、難しいことは意識させず楽しませることが先決だろう。

まとめ

今ある分散型予測市場は初心者にとって難しすぎるので、よりイベント対象を絞り簡単なUIにするべきだという主張を書いてきた。

それっぽいものを触れたユーザーは学習するはずなので、そこからより高度なプラットフォームに以降させるべきだと思う。

予測市場を分散化させるために難しいのは、結果が正しい事を誰かの信頼を必要とせずに行う部分(オラクル)なのだが、であれば結果の検証を行いやすいイベントだけで実行させれば良いのではないか。

Veil、Augur、0x、予測市場について書いてきたが、何か間違いや指摘があれば気軽に連絡いただきたい。

↓の本は、予測市場に対して示唆が富んだ内容だったので、読んでみることをオススメする。

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