サソリの毒が新たな抗生物質につながる可能性、ブドウ球菌と薬剤耐性菌に有効か

サソリ
Photo by Shayna Take on Unsplash

サソリは純粋にカッコイイが、医療等の科学的観点で有益だと思われる事はめったにない。

これまで研究者たちは、クモ類の毒液からブドウ球菌感染症や薬剤耐性結核の治療に有望な2つの化合物を分離するなど、生物から恩恵を受ける方法を探し出している。

スタンフォード大学の研究者であり、National Academy of Sciences(米国科学アカデミー紀行)で6月に発表された研究の主著者であるRichard Zare(リチャード・ゼア)氏は、サソリの毒1mlは非常に高価で採取に約10,300ドルかかるという。ゼア氏は、1匹のサソリから「搾乳」される毒液はせいぜい1mlの数千分の1でしかなく、商品として供給される場合は相当時間がかかると見積もっている。

ただし、サソリの毒液は研究する価値があり、構成化合物のいくつかは興味深い薬効特性を持ち、実験室でより安価に合成できると見られている。

リチャード・ゼア
リチャード・ニール・ゼア氏は、アメリカ合衆国オハイオ州クリーブランド出身の物理化学者、スタンフォード大学教授だ。Via:wikimedia

メキシコ国立自治大学の研究者たちは、これまで毒液の研究が行なわれたことのないメキシコ東部の種『Diplocentrus melici』で搾乳を行なった。成分を分離し、黄色ブドウ球菌、大腸菌、結核菌について試験した。成分のうちの2つ(1つは分離されたときに赤色でもう1つは青色)はブドウ球菌や結核菌を殺す作用をしたため、抗生物質になる可能性を示唆している。

サソリ
出産するDiplocentrus meliciの様子。サソリはブルーライトを当てると白く光るため、夜間でも発見が容易だ。Via:johnbokma

研究者たちは単離した化合物のサンプル(少量)をスタンフォード大学のゼア教授に送り、物質の組成と分子構造を調べた。その後、研究者は化合物を化学合成し、メキシコシティにある国立衛生科学栄養研究所「サルバドールズビラン」に送った。

研究者らは、結核に感染したマウスとブドウ球菌を含んだヒト組織のサンプルで、合成された物質を検査した。赤色の化合物はブドウ球菌を殺すの効果的であり、青色の化合物は薬剤耐性菌を含む結核に対して、マウスの肺の表面を傷つけることなく効果的であった。

黄色ブドウ球菌は、典型的に皮膚感染症を引き起こすほか、ときに肺炎、心内膜炎、骨髄炎を引き起こすこともある。 Wikipedia

この研究に関与はしていないものの、毒液の治療法を研究しているベイラー医科大学の分子生理学者/生物物理学者であるChristine Beeton(クリスティーン・ビートン)氏は、研究のアプローチは有望だと述べているそう。

ただし、これらの化合物はまだ大型の動物で試験する必要があることや、ヒトでの試験に必要な規模で成分を合成することは困難になる可能性があると警告している。

参照:scientificamerican

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