「プロ野球とは極論を言えばエンタメである」
簡単に言語化すれば、野球というスポーツにおいて最も優れた人たちを組織し、複数組織同士の戦いをファンが見ることでプロ野球産業は成り立っている。
どれだけ野球がうまくても、ファンがいなければプロ野球は成り立たない。
なぜなら収益の源泉はファンにあるからだ(スポーツは大概そう)。
〈直接マネタイズ〉
- チケット購入
- グッズ物販
〈間接的にマネタイズ〉
- スポンサー
- 広告
前者後者ともにファンがいなければ成り立たないビジネス。
すなわち、本質的に言えば「ファンが喜び金を払いたいと思える事」をするのが価値の最大化であり、ビジネスの存続に繋がる。
このような事を書こうと思った理由は、下記イチローさんのインタビュー記事を読んだため。
記事内では、データ主義化している野球への危惧がなされていた。
この主張へ、確かに一理あるなと思った次第である。
かく言う私は野球経験者。
小学生から高校生まで野球しており、ボーイズリーグで関東大会に優勝したり(中)、夏の選手権大会では準優勝だったりと(高)、比較的ちゃんとやったほうだと思う。
一緒に野球していたヤツがプロの世界にもいる。
あまり野球の試合を見ることは興味無いが、プレーの一部を見ることは好きだったりする。
ということで、野球の記事も書いてみるかというものだ。
ビジネスモデル
先に述べたが、プロ野球のビジネスモデルはファンが野球を見ることで成り立つ人気商売だ。
要約すれば、集客手段が野球であり、集客したファンを直接的/間接的にマネタイズしていくわけである。
巨人の選手が高年俸なのは、日本の首都に本拠を構え、ファンが多いからであろう(その他要素もありますが)。
人が動けば金も動くし、人が集まるから金も集まるわけ。
当然といえば当然だ。

選手が望むこと
プロ野球選手が望むことは何か。
人それぞれ価値観があるので一概には言えないものの、多くは結果を残して生き残りたいと思っている。
では結果とは何か。
数字を残すことだ。
野球はあらゆることが数値化できる。
皆が知るところだと、
- 打率
- 盗塁数
- ホームラン数
- 得点圏打率
- 三振率
- 出塁率
- 防御率
- 奪三振数
あたりだろうか。
メジャーリーグでは軍事用レーダーを用いて、
- ボールの回転数
- 打球の角度
- 守備位置
- 打球までの距離
- 打球速度
- ランニングの無駄
などなどあらゆる事象をデータ化し、データサイエンティストが分析している。
https://www.nhk.or.jp/sports-story/detail/20180228_2507.html
数字が示す客観的なデータに基づき、結果にコミットしていくわけである。
結果を残せば、厳しいプロ野球の世界で生き残れる可能性も高まる。
ゴロを打つよりフライの方が長打の可能性は高く、またある角度が最もホームランになりやすいというデータが集まり、バッターはフライを打つようになっている。
俗に言うフライボール革命だ。
実際、2017年、メジャーリーグではシーズンのホームラン数が史上初めて、6000本を超え記録が塗り替えられた。
ファンが望むこと
では、プロ野球ファンが望むことは何だろう。
究極的には、楽しめることだと思う。
楽しいから野球を見て、球場へ足を運び、好きな選手ができ、応援し、グッズを買うわけである。
つまり、楽しくなければファンは金を払わない。
最初に述べた通り、プロ野球はエンタメなのだ。
したがって、ファンがデータ主義に基づく野球を見ていて楽しいと思えれば、選手は結果を残し、ファンは集まり、市場は大きくなるという循環が生まれる。
双方のメリットが一致しているからだ。
少し話はズレるが、最近各球団がYouTube Channelで選手やスタッフの様子を発信している。
これが、めちゃくちゃ良い施策だなと思う。
データ主義とエンタメに乖離はないか
人によって楽しいと思えるポイントは異なるだろうが、多くの人はホームランが好きだ。
それは、ホームランが出ることは珍しいため、喜びが大きいからだと思う。
成功確率80%のバントが繰返えされても全くおもしろくない。
頻繁に出過ぎると喜びは減っていく。
子供が、「今日はホームラン見られるかな〜」と楽しみにしていく姿は想像に容易い。
しかし、行くたびにホームランがガンガン出るようになると、当然ランダム性は落ちるので癖になりづらくなる。
人がどのように依存するかは、『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』という本が非常に面白かった。
オススメ。
実際、データ野球へ移行しつつあるなかで、観客動員数はどうなったのだろう。
2018年MLBの観客動員は過去10年で最低だった。
しかし、昨季ワールドチャンピオンのヒューストン・アストロズの観客動員数は、リーグ最大となる前年比24パーセント上昇の2,980万人。
産業自体では下落傾向にあるものの、優勝したチーム(勝ちが多いチーム)は伸びたことになる。
また、2019年のデータでは1.7%減。
AP通信によると、MLBの平均観客動員数は今年1.7%減となり、4年連続で減少したとのことだ。
https://full-count.jp/2019/10/04/post560015/
データ野球によるものなのか、野球への興味関心が薄れているのか不明だが、近年野球ファンが増えているとは言えないようである。
データ
グラフで示してみる。
以下は1985〜2019年の観客数推移だ。
2010年あたりから減少している。

試合数は年ごとに異なるため1試合あたりの観客数も示す。
やはり、2010年あたりから減少傾向にある。

では、選手個人の成績はどうだろうか。
ピッチャーの指標は分かりづらいので、ホームラン数を示してみる。

2010年後半から急上昇している。
上述したフライ革命によるものだろう。
つまり、ホームラン等の数値は上昇しているが、集客には寄与していないように見える。
1試合あたりのホームラン数ももちろん増えている。

もちろん、データ野球が集客力低下に繋がっていて、それが因果関係であるとは言えない。
年間のホームラン数と1試合あたりの観客数における関係は以下のようになる。

一応相関係数を調べてみたところ、全体を通した1985-2019年は0.462。
しかし、2000年意向ではマイナスとなった。
年 | 相関係数 |
2000-2019 | -0.419 |
2010-2019 | -0.748 |
相関係数がマイナスとは、何かをすると逆に動くというものである。
なぜか、ホームランが増えると観客数は減っていると言えなくもない。
エンタメビジネスで集客力が低下するのは、稼ぐ力の弱体化へ直結する。
あまり良くはない傾向だ。
まとめ
プロ野球のビジネスモデル、データ野球、ファンの望むこと、データ等を書いてきた。
本記事の意図は、エンタメビジネスがあまりにもデータ駆動になりすぎると、個人の成績は向上しても、ビジネス力低下になるのでは?というもの。
野球の数値を残す選手はいる一方で、エンタメ的要素をもたらす選手がより必要となるかもしれない。
それは、日本で言えば新庄剛志氏や杉谷拳士氏のような笑顔を生むプレイヤーかもしれないし、超イケメンで女性を集めることができるプレイヤーかもしれない。
スカウトのチェックリストに、長打力や球速、ベースランニングタイムだけでなく、集客力も追加される可能性が0ではないと思う。
プロ野球は商売だ。
選手の集客力を定量化し、その指標も年俸へ含めることができれば面白いかもしれない(もうあるのかな?)。
野球経験者としては盛り上がってくれたほうが嬉しい。
野球データの専門家でも無いですし、思いつきでサクッと書いたため駄文ですが、お読みいただきありがとうございます!
*各所計算ミスってたら教えて下さい😇
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