一時不振にあえいだ無印良品を立て直した、良品計画株式会社で会長を務める松井忠三氏の著書『無印良品は仕組みが9割 』を読んだので、知見の共有にまとめておく。

「仕事はシンプルにやること」の重要性が書かれており、複雑化したシステムや会社は立ち行かなくなるという教訓を得ることができた。

概要

ナチュラルをテーマにブランドを展開し軌道に乗っていた無印良品は、競合が台頭してきたことで業績は悪化し、大赤字(38億円)となっていた。

松井氏は赤字を計上した無印良品の再建をかけ、施策に着手していく。この施策というのが、「MUJIGRAM」と呼ばれる業務マニュアルを作成していくことだった。マニュアルは全体で2,000ページを超えるドキュメントであり、言葉の定義から各担当が行う業務まで、事細かに記載されている。

このように、完全に社内の仕事を仕組み化し、従業員が進んでマニュアルをより良く改善するよう務めることで無印良品はV字回復した。

この「仕組み化すること」の大事さを、本書は伝えている。

無印にマニュアルが200ページある理由、標準なければ改善はない

全てをマニュアル化させることには、個人の経験や勘に頼っていた業務をノウハウとして蓄積化させる目的がある。なぜ蓄積させるか。それは、チームとしての実行力を高めるためだという。

マニュアル化させることで、全国どこでも軸を振らさずに業務を実行し、顧客へ同一のサービスを提供できるのだ。

概ね、どのような仕事でも「うまくいく法則」が存在し、この「うまくいく法則」を標準化させることで会社としてのレベルは上がっていく。思いといった概念をもとにレイアウト、商品開発、仕入れ、流通を行うと、必ず無駄が出る。これらの無駄を無くすことは、会社が大事にしていることを統一化させるためと、顧客の要望に答えるため非常に重要だ。

全従業員でマニュアルを共に考え、アップデートしていくと、仕事に迷いがなくなるので効率化する。

したがって、無印良品のマニュアルはトップダウンで決めるものではなく、現場から声を拾い上げるかたちでボトムアップさせ、管理職も共に毎月更新させていく形式だという。

売上とモチベが回復する仕組み、人を変えるのではなく仕組みをつくる

もともと無印良品は西友の子会社で独立化した企業だ。そのため、前会社の文化を引き継ぎ大企業前とした人材が数多く残っていたという。無印良品が独立して10年ほどたつと、新規出店とそれに伴う商品数の増加からコストがかさみ、38億円の赤字を計上した。

松井氏は、一般に取られるリストラや早期退職などの人材を切り捨てる施策は行わず、現場をまわり、顧客が求めていた革新的なニーズを探ることにした。現場で得られたことは、トップダウン主義で経験がものを言う文化が会社に残っていたことだった。

経験で物事を決めると、スキルやノウハウが蓄積されない。このことから、松井氏は「仕組み化」させることに決めた。結果は皆が知るとおりV字回復し、海外事業も好調となっている。

経営を行っていくうえで大切なのは戦略ではなく実行力である。いくら入念な計画をねっても、足を踏み出さなければ事は起こらない。このことから、無印良品では「実行95%、計画5%」という実行する事を主におくスローガンを定めた。

仕組みがないとノウハウが蓄積されないと前述したが、リーダーに必要なのは組織の向かうベクトルを定めやりきる徹底力で、徹底するためには仕組み化で軸を振らさないことが重要だという。

短期的な利益を求めてもうまくいかないので、構造に問題を見つけたら仕組みをすぐに新しくしていく柔軟性も大事であると本書は述べている。

会社が傾いた時、従業員へ頭ごなしに強制力を働きかけても意味はない。これは、傾いた原因は社内にいる人材ではなくビジネスモデルがニーズと一致していないことを意味しているからだ。社内の人間は、仕組みに納得し実行するうちに意識が勝手に変わっていくそうだ。

この社内の人間が納得し実行してくれる仕組みは、自由に物を言える風土を作り、意見を仕組みへ組み込むことが大事とのこと。

また、松井氏は優秀な人材は集まらないと言う。これは、外資企業で言われる成果主義的な人材を集めるとノウハウが蓄積されず、最悪壊されるからだそう。待遇が良いことを求めて渡り歩く人は、個の利益を追求しているのであって、必ずしも会社の利益のためでは無いことも理由だとしている。人材は育てる仕組みにしたほうが、時間はかかっても組織の骨格を強固にしていく。

新たな何かを実行する際、100%の計画をたてないと実行できない事例がよくある。これは無意味だとし、実行しながら考えないと間に合わず本当に重要なことが見えてこないからだそう。70%で走り出し、アップデートしていけば良いのだ。

決められたことをキチンとする、経験と勘を排除する

無印良品

マニュアルを作ると受動的な人間になると懸念する人がいるが、だとしたら受動的な人間を育てているマニュアルが悪い。マニュアルは全従業員で作り上げ、問題点を見つけ改善していくプロセスが非常に重要。トップダウン、ボトムアップではなく、全員で参加することがバランスの取れた仕組みを作成するコツだそう。

こうして納得できる仕組みが出来ると、現場に機動力が生まれ仕事は標準化される。というのも、標準がなければ改善もまた生まれないからだ。さらに、標準化された仕事は、仕事の本質が見えやすくなるので、従業員の士気が落ちづらくなるという。

現場の問題を知っているのは、現場の人間。経営的な数値を理解しているのは、トップの人間。したがって、双方の意見をすくい上げてまとめるプロセスが非常に重要なのだそう。マニュアルは使う人間が作るべきだろう。

作成されたマニュアルは、新入社員でも理解できなければならないという。業界用語などを用いることはコミュニケーションコストを増やすだけであり、覚えるのに時間がかかるだけ。

マニュアルには、「何、なぜ、いつ、誰が」を組み込むことで、具体性や実践的な重みがつく。理念や価値観と言った抽象的概念の言葉より、遥かに効率的に現場は回る。

また、仕組みが常にアップデートされなければ駄目な理由は、顧客の感情や市況は常に変化しているから。マーケットの半歩先を見据え、顧客のニーズに合わせるため常にマニュアルは最新版でなければならないそうだ。

無印良品では商談時のメモを共有されるようにしている。商談時のメモを報告することで、情報の行き違いが無くなったとのこと。

常に最新版のマニュアルにしておくことで、社内の情報は整理され業務が効率的となる。このことは、人材育成の速度を早めるという意味でも効果的だ。

最新版のマニュアルにしていく手順は、見えるか=>提案=>改善となる。こうすることで、暗黙の了解がなくなり業務上の問題点があぶり出されていく。

会社を強くするシンプルで簡単なこと、他社と他者から学ぶ

最前線を走る企業に共通していることは、挨拶をする、ゴミを拾う、締め切りを守るといった基本的でシンプルなことだそう。挨拶を徹底すると、自然と業務中に横の従業員との会話が生まれ、何か問題が起きた際に即報告できるような仕組みが自然と出来上がる。これは、社内の信頼関係を作っていくにあたり、非常に重要なこと。挨拶をされて気持ち悪い人など、ほぼいないはずだ。

キャノン電子の工場では、朝の挨拶を徹底させた結果、コミュニケーションが行き渡り不良品の発生を大幅に防げるという結果につながっている。

また、上司、部下、同世代、関係なく「さん」付けさせることにも効果があったそう。社内の風通しを良くするだけでなく、情報や意見の風通しを良くする目的もある。互いが互いを尊敬する事は、業務を行っておく上で大事な要素となる。

仕組みを作る、問題点を炙りだす、改善方法を考えるといった事を自社だけで行うのは良くないよう。これは、同質の人間がいくら議論を重ねても新しい知恵は出てこないからだという。他社へお邪魔し、オペレーションを見て、自社と異なる部分に気づき、活用できることはパクっていくのが大事。ただし、自社と他社はあくまでも異なるので、自社流に翻訳していくのだ。

他社や他者との交流は、浅い関係のみだと何も見えてこない。親密な関係を構築していくことで、良き人に良いタイミングで相談できるようになるようだ。

何か新しいことはじめるとき、賛成派にしても反対派にしても、慣れないことへ人間は何らかの警戒心を抱く。反対派を抑える手段で強硬策は得策ではないらしい。改革が決定したら、反対派の人をトップに据えて責任を持たせ、徐々に茹であげていく事が長期的にうまくいくコツだという。

幹部を固定することにも言及している。いつ変えられるか分からない幹部は、長期的に見てチャレンジするインセンティブが無く、無難な策しか取らなくなる。無印良品では、一度幹部に決定したら、何が何でも3年間は固定する仕組みを作ったそうだ。こうすることで、幹部は腰を据えて問題の本質に目を向け、当事者意識を持ち、部下を教育するようになる。

部下のモチベーションを上げる方法は、給料を上げることではないという。1)やりがいをもたせること、2)コミュニケーションを取ること、この2点。従業員が自社の製品を誇れるようにすることは、仕事のやりがいにつながる。「あなたの働きぶりを認めています」とフィードバックすることは超重要なコミュニケーションであり、その人を認めることになる。こうすることで、円満な関係を保てるようになったそうだ。

迷ったときには難しい方を選ぶことが長期的に良い結果をもたらす。目先の利益を取り失敗する行為は、何度も同じことを繰り返すだけだという。キチンとしたリスクを取ること、リスクを取ることを許容すること、背中を押してあげることが大事であるようだ。

部下の性格を変えられないと嘆く人は多いと思うが、性格は変わらないので不可能な事を期待していると思った方が良いらしい。責任を与え行動させると、自然とふさわしい考え方や意識が見について行くという。つまり、行動を変えるよう促すことが重要なのだ。

仕組みで生産性を3倍に、報われない努力を排除

人の感覚で在庫を管理したり、商品を開発していると、無駄な努力になることが多くなる。常にこの方法で良いのかを自問し、同じ結果を得るために使う労力を減らしていくことで、報われない努力を減らすことが出来る。無駄な努力を無くすとデータがたまり、社内に蓄積されていく。よって、リーダーは努力をすれば結果を出せる仕組みを作ってあげることが最重要だそうだ。

問題を見える化させることのメリットは、原因を追求しやすくすることに繋がる。根本的な原因を見つけることが、改善を最速に行う方法となり得る。

現在、無印良品ではデスクの上をキレイにするよう徹底しているらしい。デスクから物を減らし整理させることで、仕事も効率化されるのだそうだ。紙で共有されていた資料を、共通のデータにすることで、個人と仕事を紐付けるのではなく、組織と仕事を結び付けられるようになるらしい。前の会議で使用したデータを探すといったケースでは、整理されていることで資料を探す時間を削る事が可能となる。

また、仕事の締め切りを常に設けることも重要だと松本氏は述べている。上司、部下、部門で締め切りを共有する仕組みにすることで、仕事の進捗を把握し業務の割り振りをしやすくなる。完了しなかったタスクは、見える化されているので次回に活かすこともできるのだ。

無印良品では退社時間を決め、その時間には電気を消すようにしているそう。こうすることで、退社時間までに何をしなければならないか組み立てることができ、従業員自身の時間を作りだせるので、自由時間でリフレッシュできるようにしているとのこと。例えば、企画を提案するときに重要なのは、企画を通すことであり、きれいな資料や凝った資料を作ることは無駄になる。こういった無駄を、ケツの時間を定めることで削減できるのだ。

無印良品では、無駄な資料を織り込めなくするため、提案書はA4 1枚にまとめるよう、仕組み化されているという。

仕事を仕組み化する力をつくる、基本から応用へ

自分自身のマニュアルを作っていくことも、人生を考える上で大切かもしれないと松本氏はいう。会社で毎日行っている朝礼など、なぜ行わなければならないか説明できなければ無意味だ。

自分のマニュアルを作る際も、何、なぜ、いつ、誰、を明確にすることで無駄を省けるようになるそう。仕事はマニュアル化することで問題点や改善点が見えやすくなのであれば、私生活にも応用したらいい。

夫婦に摩擦を減らすためにも、家事を仕組み化すると良いかもしれない。何、なぜ、いつ、誰を明確に定めれば、無駄な口論に時間を割くことが減るのではないかという。

洗濯とは何か、なぜ行うのか、いつ行うのか、誰が行うのか、マニュアル化してみてはどうだろう。マニュアル化するにはコミュニケーションが必須なので、コミュニケーション不足を補える。

あせらず、くさらず、おごらず

「あせらず、くさらず、おごらず」を松本氏は大事にしているそう。だからこそ、マニュアル化すると、おごりをなくし、くさらなくなり、あせることも無くなる。

調子の良し悪しに左右されず、目の前の事をコツコツを結果を出すまで実行するしかないと述べている。

感想

本書は、

  • 日本だけでなく海外展開でも成功している無印良品を立て直した松井氏が述べていること
  • 再現性が高いこと
  • 感覚だけで言っているわけでは無いこと
  • やろうと思えば誰でも出来ること

などから、経営者だけでなく、多くのビジネスパーソンにオススメできる一冊であると言える。

松本氏が繰り返し述べており、最も重要だとしている事を要約すると以下のようになると思う。

物事の問題を見つけ改善していくために全て『仕組み化』し、標準化することで仕事をシンプルにしよう。標準化できれば、さらなる応用もできるようになる。マニュアルは実行する人物が作るもので、決して受動的な人間を生み出すわけではない。

筆者自身も身の回りで行う事柄や生活をマニュアル化し、何、なぜ、いつ、誰を示し、実行していく事で問題点を見つけやすくしていきたい。問題点が見つけやすいということは、改善しやすくなる事も意味するからである。

また、仕組み化したマニュアルは常にアップデートさせる必要があるので、陳腐化することはない。2013年出版の少し前の書籍だが、言っていることの本質は古くならないだろう。

You May Also Like
続きを読む

無料という価格を使った破壊的なビジネスモデルの作り方。『フリー〈無料〉からお金を生み出す新戦略』を紹介

この記事は、Youtubeに公開した動画を元に記述したブログである。 文字よりも動画が良い方は、以下よりご覧頂きたい。 トピック はじめに内容紹介感想 はじめに 今日は無料を使ったビジネスモデルについて、話しをしたいと思…