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失敗するからこそ改善点は見つかる:「失敗の科学」は良書だと思う

失敗の科学
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はじめから結論を言ってしまいます。

この本、めちゃ良かったです。

簡単に要約すれば、成功や勝ちの前には必ず失敗があり、失敗から学ぶ事でしか改善は生まれないというもの。

  • 予想外の出来事や失敗が日常的に起こる『航空業界』
  • 失敗を隠蔽する体質の『医療業界』
  • 統計データやDNA検査を示しても有罪を言い渡す『検事』
  • 詐欺的教祖から離れられない『信者』
  • 世界的に成功した『スポーツ選手』
  • 明確な失敗の無い『エセ科学』や『占星術』

伝統的に負けや失敗を認められない体質にある業界と、失敗を当然とし、その失敗から改善点を探り続けることが成功へつながっている事例が比較し示されています。

著者であるマシュー・サイド氏は元イングランドの卓球選手であり、オリンピックへも出場している人物。

「失敗し、何が悪いか仮説をたて、練習する」業界にいたわけです。

継続的な成長の要因が気になったサイド氏は、文献やインタビューを通じて

  • 何が成長に起因したのか
  • なぜ失敗を認められないのか

を分析。

本書を書き上げています。

すべては、『ミスがない』=『より良くなる可能性が無い』ということへ帰着します。

占星術は古代から進化しませんが、それは全て解が「あやふや」なので、改善するポイントすら無いわけです。

 

図にしてみる

実行し、正解することが必ず正しいとされる考え方の場合、変化がありません。

理由は、振り返ることをしないためです。

対して失敗することはOKで、失敗から要因を探り、改善していく考え方は常に変化していきます。

失敗の科学

僕が独断で作成したチャートでは、失敗を恐れる硬直した考え方は直線的に物事が推移します。

対して、失敗から改善する場合、階段状に変化していき、外部から見えると指数的な成長に見えます。

失敗の科学

最初は小さな変化を誰も気づきませんが、いつの間にか成長している。

そんな現象から、成功している組織や人はいつの間にか超強い状態であると錯覚されます。

ビジネスから切り離せば、趣味へ真剣に取り組んでいる人は常に失敗していることへ気づくはず。

釣りを例にしますが(僕がわかるから)、

  • キャストして当たりが来ないから場所を変える
  • ルアーの反応が悪いから別の物へ変える
  • 狙う獲物によってハリスを変える
  • 過去の経験から危険を察知する

などなどです。

事例

いくつか本書で紹介されていた事例を紹介してみます。

3M

例えば3Mの例をあげてみます。

3Mは、既存製品を改良する際に、どうしても上手く行かない箇所がありました。

数値計算でモデリングするのは1つの解ですが、あえて色々な失敗作を作っています。

失敗作をいくつも作成し、その失敗作がなぜ失敗作となったかを詳細に分析することで、大きな成果を上げました。

理由は、意図的に失敗を作ったことで原因が特定できたからです。

既存製品と改善品は、大きく異なる形となったそう。

数値計算のシミュレーションだけで、失敗の本質は見えて来ないということですね。

Google

有名な話ですが、Googleは広告により収益を上げる企業です。

同社トップデザイナーであったジェイミー・ディヴァイン氏は、リンクの色が広告のクリック率に大きな変化(向上)をもたらすと予想し、新たな青色を役員へ提案しました。

Google社の幹部はサイエンス系であるため、全てリンク色を変えることはせず、ランダム化比較試験(RCT)に基づきテストしました。

結果として、ディヴァイン氏の提案は仮説通りになりませんでした。

しかし、元YahooのCEOで当時同社にいたマリッサ・メイヤー氏は、ディヴァイン氏の提案した色だけでは足りないと判断。

41色の青色を用意し、膨大な検索ユーザーに対してRCTを行いました。

RCTを行う理由は、該当の事象を行わなかった場合はどうであったか、比較対照群はどうであったかを測定しなければ、仮説の正誤を判断出来ないためです。

結果として、最もリンククリック率が高い青色を発見でき、『青色の違いだけ』で2億ドルの収益増加へ繋がったとされています。

ちなみに、執筆現在で検索結果は、以下のカラーコードでした。

  • PC : 「#1a0dab」
  • Mobile : 「#1558d6」

モバイルとPCでカラーコードが異なるのは流石です。

Dropbox

ドリュー・ヒューストン氏は、Dropboxの創業者です。

ヒューストン氏はDropboxのコンセプト、つまり「どのデバイスからもアクセスでき、ファイルは常に同期されているオンラインストレージ」を考えていた時、すぐにうまくいくとは考えていませんでした。

実際、コンセプトを投資家へ話しても1年以上資金調達の目処が立たなかったそう。

コンセプトを実際のソフトウェアへ落とし込もうにも、コードを書き上げるには時間も人も資金も足りませんでした。

そこで起点を利かせ、コンセプトを伝えるだけであれば出来ると判断。

カーソルが動き、ファイルも同期される様子のデモ動画を公開したところ、見込み客が爆発的に増加しました。

確かな需要を把握した上で、未完成でも公開し、フィードバックを受けつつ改善することで、Dropboxは2014年に時価総額100億ドルを突破しています。

完璧なソフトウェアなど存在しないので、都度改善する方針の賜物です。

マイケル・ジョーダンとデイビット・ベッカム

マイケル・ジョーダンは最強のバスケットボールプレイヤーですし、デイビット・ベッカムはフリーキックの天才です。

そんなジョーダンやベッカムでさえ、完璧ではありません。

ジョーダンはある有名なCMで次のように話しています。

キャリアを通して9000本以上のシュートを外した。約300試合に負けた。26回勝利のシュートを託され、ミスした。

失敗を認めています。

ベッカムは子供の頃、至って普通のサッカー少年でした(僕の予想ではハイレベルのなかで普通ってことだと思う笑)。

シュートを外しても、何度も何度も練習し続け、次第に練習場では人集りが出来るほどになっていったそうです。

David Beckham Top 10 Goals That Shocked The World

何も知らない人は、天才的なシュートに凄いとしか思いません。

しかし、常に側で息子を見続けた母親は、そのシュートが失敗と練習の賜物であることを知っています。

ベッカム氏はあるインタビューで、キックする前には必ず失敗する風景も思い浮かぶと話しています。

失敗しなければ、改善点は見えないので、上達しないということです。

まとめ

総じて、失敗を許容する文化の組織や人の方が、より良い結果を生むという結論です。

参考文献も多く用意されていることから、非常に多くの事例を学ぶことが出来ます。

また、なぜ人は失敗を認めないのか、失敗できないと思ってしまうのかに関しても、業界の特性や心理学的観点から考察されています。

  • 警察や検察で言えば、冤罪は組織へ泥を塗る行為
  • 検事は大変な思いをして就いた職業で、善意から職務を全うするなか、自分の判決を否定することは難しい
  • 信じて貢いだ人が実は詐欺師であると捲れても、これまで信じた自分を否定するのは難しい
  • 患者と関係者に大きな情報格差があり、結果と原因を追求されづらく、失敗したことを話せば恨まれ、訴訟される医療業界において、医療ミスやオペミスを進んで公開するインセンティブはない
  • 株式取引をしている場合、損を切り利を伸ばすのがセオリーだと分かっていても、損を伸ばせば、損した事が確定しないので放置してしまう

『進んで失敗し、失敗から改善する習慣』が、「目的を果たすのにより良いであろう」という結論に超絶同意しました。

ビジネスからスポーツまで、誰にでもオススメできます。

ぜひ、手にとって見てください。

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