偽情報が脳をハックする方法と騙されないためのコツ

偽
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デジタル化された現代社会は、我々の偽情報(フェイクニュース)に対する脆弱性を高めた。

しかし、脳の弱点を認識することで、耐性をつけることはできる。

約3年前、エドガー・ウェルチという『ピザゲート』を信じていた人物は、次のようなメッセージを友人へ送っている。

「児童性愛のネットワークを襲撃する。多くの命を救うために、何人かの命を犠牲にするかもしれない。赤ん坊や子どもたちを誘拐し、拷問し、レイプするようなことが俺たちの身近で起こっている。その腐ったシステムに対して立ち上がるんだ。次世代の子どもたち、我らの子どもたちを、こんな邪悪な目にあうことから守るんだ」

コメット・ピンポン
児童性的虐待に関わっているとされたピザ店、コメット・ピンポン英語版)。Farragutful [CC BY-SA]

2日後、ウェルチはワシントンD.C.に向かい、ホワイトハウスから北西7キロほどの交差点に面したピザレストラン『コメット・ピンポン』に到着。この時、軍用のM16自動小銃(AR-15)の銃口を下に向けて胸に抱えつつ、38口径のリボルバーを腰のホルスターに差し、店内へ入った。

「ピザゲート」とは、児童性愛の地下組織が首都ワシントン近郊のピザレストラン「コメット・ピンポン」を拠点に活動しており、そこに民主党の大統領候補だったヒラリー・クリントン氏が関与している、とネット上に拡散していた出所不明の陰謀論だ。

AR-15
AR-15, Via : https://flic.kr/p/9iucur

ウェルチは店内で、『ピザゲート』の証拠となる「子どもたちが閉じ込められた秘密の部屋」を探す。そして、鍵のかかった部屋を見つけると、ドアに向けて自動小銃を発射する。

だが、その部屋には誰もいなかった。

ウェルチは3時半前には店内に武器を捨て、両手を上に掲げて正面入り口から投降する。

逮捕後の供述で、ウェルチ氏は、「ピザゲート」のニュースをインターネットやラジオ、さらに知人の話で知り、自分の手で調査しようと思った、と話している。

ウェルチが逮捕されてから3年たったが、情報はさらに溢れ、テクノロジーは進化し、より詳細な虚偽情報を描き出せるようになっている。

大胆な犯行を実行しただけで、エドガー・ウェルチと他の人はさして変わらない。

例えば、繰り返し偽の主張を受けた時の事を想像してみよう。

最近の研究で、Jonas De keersmaecker(ジョナス・デ・キースマッカー)氏率いる研究チームは、『知的』かつ『分析的』で、『曖昧な事が気にいらない』ような人でも、繰り返し同じ主張を聞かされると、説得力ある言葉だと感じることを発見した。

「錯覚による真実の効果」として知られるこの現象は、1970年代に初めて報告されたもの。フェイクニュースであふれる現代社会では、かつてないほど重要である。

ドナルド・トランプ大統領が頭に浮かぶ人がいることと思う。トランプ氏は、この種の嘘をたくさんつく人物である。ワシントン・ポストは最近、「トランプ氏が同じ主張のバリエーションを、少なくとも3回繰り返した350以上の事例がある」と報告した。

オンライン空間の増大は、偽情報の拡散性と同様の事例を目にする可能性をさらに高める。虚の主張を繰り返すと、即座に世界へ広がるからだ。

さらに重要なのは、虚偽の主張をしている人は、公の場やニュースで主張に伴う圧力(潜在的な法的影響)を避けながら、その主張を続けていることである。

心理学者によると、同じ主張を繰り返すと真実であるように見えるのは、その『流暢さ』であり、流暢さは、情報を処理する際の認知で『容易さ』を意味するよう。

最近の研究レビューで、ハーバード大学のNadia M.Brashier(ナディア・M・ブラシエル)氏とデューク大学のElizabeth J.Marsh(エリザベス・J・マーシュ)氏は、人間が真実の判断を誤る2つの理由を明らかにした。

流暢さと、その流暢さが生み出す良い感情へ密接に関連するものは、『記憶』だ。我々の記憶に蓄積された情報や経験は、真実を求める戦いにおいて強力な武器となる。

しかし、記憶は手掛かりとして機能し、よく考えた判断をするための『素材』でしかない。言い換えれば、私たちは『十分そうな選択肢』を選ぶ傾向にある。

さらに、我々は自分が関心を持っている問題について、知識や理解を過大評価する『錯覚』の犠牲になることもある。調査によると、自分の能力を過大視すると、極端な信念を持ち、フェイクニュースを真実として受け入れる傾向が強くなるという。

残念なことに、SNSや運営者不明のブログなどは、我々の記憶や思考力を弱くし、真実を判断する能力を弱体化させているかもしれない。Brashier氏とMarsh氏は、「検索アルゴリズムは、真実でなくキーワードに基づいてリクエスト(コンテンツ)を返すからだ。

Brashier氏とMarsh氏はまた、人間の脳とデジタル環境の間で起こる、基本的なミスマッチについても指摘している。これは特に視覚情報に当てはまるという。

真実を判断するための手がかりと同様に、これは他の状況では便利で役に立つ適応力だ。

つまり、人間は何千年もの間、『感覚を信頼できる環境』で生きてきた。しかし今、我々は新しいエコシステムの中で生活している。

ある情報源によると、近いうちに人間は〈真実を伝えるメディア〉よりも〈偽情報のメディア〉を多く消費するようになるとのこと。このような偽情報へ対処するには、脳の能力が十分でない。

『何かできることはないだろうか』、といっても難しい。単純な事実確認を要求するだけでは、十分でないからだ。

ただし、希望はある。脆弱性を認識すると、その脆弱性を念頭に置いて行動できる。

デューク大学のEmmaline Drew Eliseev氏、Brashier氏、Marsh氏は、研究参加者に事実をチェックするよう促すだけで、『錯覚による真実の影響を払拭できる』ことを発見した。

また、最も興味深い解決策の1つはコラボレーションがある。

Ziv Epstein氏(MIT)、Gordon Pennycook氏(リジャイナ大学 )、David G.Rand氏(MIT)は、ニュースソースの信頼性に関するクラウドソースの判断が、驚くほど正確であることを発見した。

彼らは、ソーシャルメディアのユーザーがアルゴリズムでトレーニングし、スケーラブルで分散型のソリューションとしてフェイクニュースを発見できるよう提案している。

友人からの警告を無視し、エドガー・ウェルチは1人で犯行を行った。おそらく、我々全員が脳の脆弱性を認識していれば、同じ過ちを犯すことはないだろう。

Judging Truthの概要

フェイクニュース、広告、政治活動、噂など、虚偽の主張が私たちを取り囲んでいます。人々は、何を信じるべきか、どのように知れば良いのでしょうか?

真実の判断は、基準率、感情、記憶から取得した情報との一貫性という、3種類の情報から得られた推論を反映しています。

  • 第1に、人々は私たちの環境でほとんどの主張が真実であるため、入ってくる情報を受け入れるバイアスを示します。
  • 第2に、人々は、処理の容易さのような感情を、真実の証拠として解釈します。
  • 第3に、人々は(常にではないが)、記憶に保存されている事実とソース情報に一致するかどうかを考慮します。

この3つの部分からなるフレームワークは、特定の幻想(例:真実性、幻想的真実)を予測し、頑固な誤解を修正する方法を提供し、虚偽が真実よりもさらに速く移動する世界で収束する、キッカケの重要性を提案します。

参照:Scientific American新聞紙学的

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