現在GoogleやFacebookなどの企業は、ユーザーデータの販売と収集から数十億ドル規模のビジネスモデルを構築している。この枠組みの下でインターネット活動は監視され、位置を特定され、データマイニングされることは避けられない。

もちろん、無料で素晴らしいツールを使用できているので、良い恩恵を受けてることも確かだ。

ありがたいことに、個人のプライバシー保護とセキュリティを最大化するため、強力な暗号技術を使おうとする活動がある。エドワード・スノーデン氏やWikileaksのジュリアン・アサンジ氏といった個人が暴露した事件を受けて、インターネットユーザーは知識を深め、自分を追跡せず、ブラウジングの活動と身元を関連づけないアプリケーションを利用する傾向にある。

そう遠くない昔、Googleは超えることのできない巨大企業のように見えた。しかしここ数年、DuckDuckGoがプライバシー保護と匿名性を保つことで「Google検索」に取って代わる使命を担っていること(『ググる』が『ダクる』とかになるのか?)、ProtonMailがエンドツーエンドの暗号化を提供しながらもGmailの重要なライバルになったこと、TorブラウザがChromeと同じくらいユーザーフレンドリーになったこと、Facebook MessengerではなくオープンソースのメッセージングアプリSignalがシークレットコミュニケーションの標準になったことを見てきた。

Google
Image by Hebi B. from Pixabay

そして、ジョージ・オーウェルを思わせるデータマイニングツールの2つ、Google DocsとDriveに挑戦するサービス『Graphite』がある。ユーザーが所有する暗号鍵と侵入者を防ぐチームソリューションを提供することで、安全に個人や企業のグループドキュメントを管理し、より機密性の高い共同プロジェクトへ取り組むことができるようになった。

Graphite
Graphite

GraphiteはBlockstackに基づいており、Stealthyのコラボレーションを発表して以来継続的に発展している。いくつかの課題は解決され、プロダクトは巨大でカラフルなGoogleと対決する準備ができた。この記事では、その特徴と機能を並べて比較する。

Graphite vs Google Docs

Graphite

まず、GraphiteがGoogle Docsの強力なライバルであることを納得させる、優れた機能について説明しよう。

まず、ソフトウェアのオープン性を強調することに価値がある。Graphiteは誰でもGitHubからクライアントソフトをダウンロードしたり、コードの監査や変更を行ったり、さらにはプライバシー保護を保証するセルフホスティングサーバーで実行することもできる。これは、多くの企業がプライバシーと機密性に関心がある場合、活用を検討すべき利点だ。

またGraphiteの開発リーダーであるJustin Hunter氏が説明するように、この機能は検閲の可能性を回避することもできる。

「もし、Graphiteがある国でブロックされたら(graphitedocs.comへのアクセスがブロックされたことを意味する)、その国のユーザーはgraphitedocs.comにアクセスすることなく、自分のコンピュータやサーバー上でGraphiteを実行することができる。様々な状況でリアルタイムのコラボレーションを機能させるため、Graphiteサーバーをローカルで実行できるよう、WebSocketサーバを提供している。もちろんOSSだ。これらすべてを行うのにフォークは必要ない」

次に、ユーザーは自身が制御するキーで暗号化できる利点がある。したがって、ドキュメントに投稿したユーザーが、実際にその人物であることを確認できる。リンクを取得した他のユーザーは、許可なくコンテンツを読み取ることはできない。これは、情報源を守りたいジャーナリスト、複数のパートナーと仕事をしておりファイルを安全に共有する必要があるといった、データ漏洩にシビアな企業にとって有用だろう。

オンラインサービスを使用してデータの自律性よりも利便性を重視する場合は、Proプランの興味深い機能を選択することもできる。フォームの作成、ドキュメントの共有、作成したフォームの編集をチーム全体でリアルタイムに行うことなどができる。それぞれ、25MBのファイルをアップロードすることが可能であり、チームを管理すると、そのチームは自動的に自分の暗号鍵を受け取る。

Graphite vs Google Drive

ストレージ容量の点ではまだGoogle Driveに遠く及ばないが、高度な暗号化とセキュリティーが一時的な制限を補い、改善が図られている。

「Graphiteの無料版はG-Suiteの軽量版だが、Pro版はG-Suiteに期待される追加ツールにかなり近い」とHunter氏が説明したように、Graphiteの機能は検閲による潜在的な事件を回避することもできる。

「Graphite Proを使用すると、連絡先のマッピングとプロパティ編集を行うことができる。Graphite Formsを使うと、フォームを作成してWebサイトに埋め込んだり、直接リンクを共有できる。また、チーム管理機能も備えているんだ」とHunter氏は言う。

データ転送量よりもプライバシー保護が重要な場合、Graphiteが最適な選択肢だろう。パートナーや共同作業者とは、Graphiteで機密ファイルを共有する方が確実に安全だ。それ以外の目的の場合はGoogle Driveから移行する準備が整っていない可能性がある。

Graphite Proは現在月額19.99ドル。これは無制限のユーザー数を提供するが、サポートを受けるための連絡先として指定できるのは1人だけとなっている(これはスケーリングに役立つ)。

Blockstack
Photo by Kaleidico on Unsplash

前述したように、この追加の有料サービスはデータストレージと高度なチーム管理機能を実現するものだ。したがって、ユーザーはサービスに対して料金を支払うかどうか、契約書と個人データのどちらで支払うかを選択しなければならない。

完全では無いが伸びしろあり

Google Docsを置き換えるのに役立つだろうか?

この質問については、実際のエディタに備わる機能を確認する必要がある。

まず、インターフェースについて詳しく見てみよう。ほとんどの時間を過ごす場所なので、非常に重要な部分だ。

Graphiteのエディタは非常にキレイであることが分かる。テキストエディタに邪魔なものは無く、ほとんどの機能はツールバーのトップに備わり、動きもスムーズだ。全体として、Googleのカラフルかつ高機能で気が散るようなアプローチよりも、Graphiteの美しさの方が好きな人も多いかもしれない。

非常にシンプルなインターフェイス

しかし、これが暗号化ソリューションのメリットのほとんどだ。筆者が試しに入力とコピーのテストをしてみたところ、Google Docsはペーストしようとしているテキストのフォントを自動的に識別し、オリジナルを維持している。

一方、Graphiteではドキュメント内で現在使用しているフォントが使用される。

また、暗号化されたソリューションにコメントを追加する必要があるとき、コメントを含むテキストをクリックしない限り、コメントは表示されない。Googleは、紙に貼られたポストイットステッカーのように、コメントをコンテンツの横に置くのに便利だ。一方、GraphiteはGoogleが提供する大規模なオプションでは見つけることができなかったフォントを使用している。これはCaviar Dreamsと呼ばれ、美しいSans serifが元になっている。

全体的にテキスト入力とペーストの体験は似ていたが、ページのズームインとズームアウトができる「表示」メニュー、テキストとスペースを測るための定規機能、さらには全画面で作業できる機能がGraphiteにあれば良かったのかもしれない。Google Docsには上記の機能がすべてあるだけでなく、さらに多くの機能が備わっている。

画像の埋め込みも可能

Graphiteはエディタのインタフェースで右クリックすると、独自のコンテキストメニューが表示されず、代わりにブラウザ固有のオプションが表示される。特殊文字を挿入する場合、その特殊文字用のボタンやメニューはなく、キーボード上の記号や他の場所から持ってきたコンテンツに依存する必要がある。また、Graphiteでは13種類のフォントしか扱えない(Hunter氏によると今後さらに多くのフォントが登場するという)ので、クリエイティブな仕事をしている人はいくらか制限を感じるかもしれない。フォントのオプションは必要最低限のものとなっている。

科学的な調査を行っている学者は、参考文献の脚注を含める機能がないことを知って驚くだろうし、現バージョンの実装ではページ数を数えることさえできない。そのため、Graphiteのインターフェースだけでは作成できない文書がたくさんある。

全体的に見ると、Graphiteはメモを取ったり、チームメンバーと共有したり、他のメンバーと協力してアイデアを出し合うための手段と考えるべきだ。ライターとして働く人の中には、ミニマリスト的で機能が絞られたインターフェースに満足する人もいるだろうが、編集機能がないこと(変化を追跡する能力など)により、まだGoogle Docsから乗り換え可能なまでには至っていない。

Graphiteは機密性の高いコラボレーションには最適だが、Microsoft WordやApple Pages(プライバシー保護に関心がありコンテンツをオフラインにしておける)といったローカルクライアントのように、独立したツールに依存している。あらゆる目的でGoogle Docsと競合することはできないが、独自のニッチを確保しており、それを実現することは間違いない。

暗号化されてはいないがドキュメントをシェアするリンクを発行できる

一方、GraphiteのGitHubリポジトリのロードマップファイルを見ると、他のユーザから報告された未解決の問題(大部分は解決されたがいくつかはまだ未解決)や、製品の改善計画が数多くあることが分かる。

このプロジェクトが本当に気に入っており、Graphiteを成長させ、Googleに対抗させたいと考えているのであれば、プルリクエストを提出したり、問題を報告したり、あるいはボランティアでコードをレビューして改善することもできる。オープンソースプロジェクトの素晴らしさは、誰もが参加できることであり、十分な数の人々が一致した目的のために専門知識を提供すれば、シリコンバレーに拠点をおく巨大企業を打ち負かせれるかもしれない

資金と成長

これまでのところ、Graphiteの開発にはBlockstackの助成プログラムであるApp Miningが全面的に資金を提供している。多くのVCやエンジェル投資家が参入してくれば、開発は継続され、Googleからユーザーを引き離せる可能性が高くなる。結局のところ、プライバシーに配慮したツールへの需要はかつてないほど高まっており、Googleのサービスに代わるものはいつでも歓迎だ。

今のところ、GraphiteはGoogleと比較し機能的には不足しているが、野心的なライバルだ。しかし、この高貴な戦士は、英雄の旅を完成させ、獣を殺すために試練を経なければならない。

Hunter氏によると、Graphiteの出発店は寓話の英雄と同じようにつつましいものであった。

「これは、私がライターとしてGoogleから離れるために作ったアプリケーションで、いつのまにか非常に大きなものに成長したんだ」

登録

Graphiteを使用するには、Blockstack IDでログインする必要がある。Blockstack IDを1つ所有して入れば、Blockstackで稼働するアプリケーション全てを同一IDで使用できるので、作成しておくと良いだろう。

Blockstack IDの作成方法は、以下の記事で確認できる。

このリンクからGraphiteのウェブサイトにアクセスし、右上の「Start Now」でログインする。

Start Nowをクリックすると、Blockstackブラウザが開くので、作成してあるBlockstack IDでログインする。

Blockstack

作成したBlockstack IDを選択し、先に進む。右上にあるBlockstackとGraphiteを連携させる感じ、良いなぁと思う。

Blockstack

連携が完了すると、以下のように空のインターフェイスが表示される。

Graphite

メールアドレスとパスワードを指定してログインするのは非常に面倒なので、ウェブの体験(UX)は最高だと思う。現在、SSOのようなソリューションはFacebookやGoogle、Twitterといったデータマイニング企業に寡占されているが(エンタープライズではOneLoginなどもあるが)、Blockstackのように安全かつ情報収集をされないソリューションでアプリケーションを連携させたり、利用できるのは嬉しい。

参照:bitcoinmagazine

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