経済成長が鈍化してきた現代社会は、人口の構成において変化が起きている。

特に高齢者の割合が増加しており、今後数十年間で大幅に増加すると予想されている。例えば、北米では現在、65歳以上の人口が14歳以下の人口を上回っている。これは日本も同様で、15歳未満の人口と65歳以上の人口を比較すると、高齢者の方が2倍以上多いことが内閣府の発表で明らかになった。

高齢化 データ
高齢化の現状

高齢者人口が増えるなかで重要な事実は、1人暮らしの人が相当数いることである。パートナーが死別したり、離婚してたり、結婚しているが配偶者と別居していたり、独身であったりと理由は様々だ。典型的に、これらの高齢者は独り身のままで、1人暮らしを続ける傾向にある。

パートナー無しで生活している人(特に老年期)は、孤独感や社会的孤立、臨床レベルのうつ病といったリスクがあることを示すデータが数多くある。

孤独とペットの飼育

孤独とペット
Photo by Clément Falize on Unsplash

多くの心理学者が、人間は誰かに愛着を持ち、社会関係を維持し、帰属意識の個人的欲求を満たす必要を示唆するデータや理論を提示している。人間関係がない場合にはペットを飼うことが社会的支援の重要な要素となり、孤独感や孤立感を払拭するのに十分である可能性がしばしば指摘されてきた。

ペットの飼育と孤独感の関係について示唆するデータを提示した研究はいくつかあるが、それらは非常に小規模で全国的なサンプルに基づいていない。

しかし、この問題に関連する他の要素も考慮する必要がある。ペットで最も人気の動物は犬と猫であり、人間へ社会的な支援を提供することに関して言えば、犬と猫が同等の利益を提供するかどうかは非常に重要だ。このことは、一般的に猫は犬より飼いやすいと言われ、メンテナンスの必要性が少なく小型であることから、アパートや老人ホームに住む高齢者にとって考慮すべき事柄となっている。

最新の調査

高齢者
Photo by Matthew Bennett on Unsplash

ドイツの最新研究は、高齢者の孤独を防ぐ効果が犬と猫で同じかどうかという問題に取り組んでいる。この研究は、ドイツのハンブルクにあるハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのAndre Hajek氏とHans-HelmutKönig氏によって行われた。データは1996年に収集を開始したドイツの高齢化調査によるもので、ドイツに居住する40歳以上の個人を対象に現在行われている。

この研究ではパートナーのいない高齢者を対象としたため、研究者らは、

  1. 配偶者が死亡した人
  2. 離婚または別居した人
  3. 単独で生活している人

という3タイプの65歳以上の個人に分析を限定した。その結果、1,160人の被験者からなる試験群が得られた。

社会的孤立感を測定するため、研究の参加者には「社会にあまり属していないような気がする」、「仲間はずれにされているような気がする」というような発言を評価するように依頼し、孤独感を「周りに人がいて居心地が良いと感じているのが恋しい」または「感情的な安全と温かさが恋しい」のような発言が、各参加者にどの程度適用されるかを決定することで測定した。

次に、サンプルをペットの所有権に従って分割した。主なグループは、

  1. ペットを飼っていないグループ
  2. 犬と一緒に住んでいるグループ
  3. 猫と一緒に住んでいるグループ

の3つ。研究者らは一連の複雑な回帰分析を用いてデータを説明したが、主な結果は理解しやすくなっている。

調査の結果

孤独
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社会的孤立感

社会的孤立感に関して、ペットを飼っていない人が最も高く、次いで猫を飼っている人も社会的に孤立していることが分かった。これは、猫を飼うことによる心理的なメリットはほぼ無いだろうという事を意味する。しかし、参加者全員を見てみると、犬と一緒に暮らすのは良いことだと分かる

研究者たちは、犬を飼うことで、ペットを飼っていない人や猫しか飼っていない人と比べ社会的孤立感がかなり軽減されることを発見した。結果をさらに分析すると、女性の方が男性よりも効果が強いことが明らかになっている。

孤独感

孤独感の結果を見てみると、最も孤独な人はペットを飼っていない人であり、社会的孤立の場合と同様に、猫を飼うだけでこうした感情は減らないことが分かった。しかし、犬を飼うことで女性の孤独感はかなり軽減されるが、男性ではわずかであった

性差

研究者らは、性差は強い影響を及ぼしていることを示唆している。なぜなら、本研究が実施されたドイツでは一般的に高齢男性の方がフォーマルかつ広範な社会的支援を受けており、これは人間との接触が可能であることを意味し、心理的な安らぎを得るためペットへさほど依存しないことを意味するからである。

以上のことから、ペットとして犬を飼うことは、他の人間との交わりを持たずに暮らす高齢者の社会的孤立感や孤独感を軽減すると考えられる一方、ペットとして猫を飼うことに同じような利点は無いようである。

犬の方が効果的である考察

犬
Photo by Adam Griffith on Unsplash

猫の飼育で効果は出ないが、なぜ犬が社会的孤立や孤独感を和らげることができるのか。Psychology Todayで記事を執筆したStanley Coren博士は、次のように考察している。

犬を散歩していると、近所に住んでいる人物と偶然出会うことが多い。その隣人と数分間おしゃべりをすると、こういったことが起こる。最近起こった出来事などについて話し合い、その後、共通の知人ついての話題で盛り上がる。

この知人と話すという行為は、社会環境へ完全に溶け込んでいると感じるのだそう。仮にペットが猫だけだとした場合、こういった会話は生まれなかっただろう。犬が運動(散歩)を必要とするという単純なことから、高齢者は家を出ることを余儀なくされ、社会的な出会いや交流の機会を得ることができる

猫は人をドアの外に連れ出さず、他の人と接触することはできない。

結論として、猫は社会的な結びつきを創出しないが、犬は散歩が必要であるため人との接触が起こる確率が飛躍的に高まるということ。

心理的作用は複数の要因が絡むことが多いため一概には言えないが、この記事が参考に慣れば幸いである。

参照:psychologytoday

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