心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療に大麻を使用する人が増えている中、新たなUCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)の研究で、処方箋として十分な証拠が裏付けられていないことが報告された。

Journal of Dual Diagnosisに掲載されたシステマティックレビューによると、カンナビノイドと呼ばれる大麻の有効成分は、PTSDの治療、特に悪夢の軽減と睡眠の促進に有望である可能性はあるが、日常的な診療で使用すべきかどうかを判断するには、さらなる研究が必要であるとされている。

大麻に含まれる主なカンナビノイドである、『CBD』と『THC』についての記事はこちら↓

本研究の筆頭著者であるChandni Hindocha博士(UCL臨床心理学研究部門)は、以下のように述べた。

「最近、PTSDの治療にカンナビノイドを使用する関心が高まっており、特にアメリカのいくつかの州で、すでに自己治療や処方箋を得ている退役軍人が使用している」

Chandni Hindocha

PTSDはイギリス人口の約1%を侵す潜在的な神経衰弱状態であり、典型的には侵入思考やフラッシュバック、悪夢による心的外傷イベントの再体験から成り、過敏症(絶えず警戒している状態)および不眠症を伴う。

心的外傷に焦点を当てた認知行動療法を含む精神療法(会話療法)はPTSDにも有効であることが示されているものの、誰もが会話療法にアクセスできるわけではなく、誰にでも効くわけではないため処方薬を服用しなければならない人も多い。PTSDの治療薬として承認されている既存の薬剤は、万人に効かず副作用を引き起こす可能性があるため、研究者らは新しい治療法を見つける緊急の必要性があると述べている。

カンナビノイドの使用はアメリカのほとんどの州で承認されているPTSD治療法で、医療用大麻の使用が認められている。

大麻
医療用大麻はTHCが少ないかコントロールされたハイブリット大麻株で構成される。
ジョイントとして吸引したりチンキ剤といったオイルで経口摂取する事が多い。
Photo by GRAS GRÜN on Unsplash

大麻の有効成分であるカンナビノイドにはテトラヒドロカンナビノール(THC)やカンナビジオール(CBD)が含まれており、脳での記憶処理を変えることができるため、PTSDの治療に役立つ。カンナビノイドは脳に組み込まれた内因性カンナビノイドシステム(ECS)に作用し、PTSDの影響を受ける他の脳機能も調節するのだ。

研究チームは、PTSDと診断された人がカンナビノイドを使用し症状が軽減したすべての研究をレビューすることで、各研究の質を評価した。

研究者らは、大麻ジョイント、THCまたはCBDをオイルや錠剤の形で含む製品、およびナビロンと呼ばれる合成カンナビノイドを含む、基準を満たす10件の研究を発見した。

いずれの研究もバイアスリスクが中〜高であり、サンプルサイズが小さいこと、レトロスペクティブな研究方法、対照群やプラセボがないこと、追跡期間が短いこと、および他の薬物使用や嗜癖を報告していないことなどの制限のため、いずれも質が低いと評価された。ナビロンを検討したランダム化比較試験は1件のみであったが、比較的短期間の小規模サンプルで実施されていた。

研究者らによると、PTSDに対する大麻をベースとした薬物療法の安全性と有効性、および嗜癖や精神病のリスクなど潜在的かつ長期的な影響について、まだ未解決な多くの問題があるという。

しかし、いくつかの研究で大麻製品が不眠症や悪夢などのPTSD症状を軽減することが示されていることから、既存の証拠は有望であるとしている。

研究の統括著者であるMichael Bloomfield博士は、次のように述べた。

「証拠に基づく、PTSD治療へカンナビノイドを使用することの臨床的な推奨はまだできない。現在行われているPTSDに対するカンナビノイドの処方は、質の高い証拠によって裏づけられていないが、この知見はさらなる研究、特に長期臨床試験の必要性を明らかにしている」

Michael Bloomfield

「これら研究の多くは退役軍人を対象に実施されているが、PTSDは外傷の性質によって異なるので、『異なるアプローチが異なるグループ』にも利益をもたらすか確認するべく他グループにも目を向ける必要がある」

Michael Bloomfield

筆頭著者であるHindocha博士は、Bloomfield博士のコメントへ以下のように付け加える。

「残念なことに、歴史的に大麻の医学的使用は法的規制から研究が困難であり、臨床的に推奨を支持する十分な証拠が得られるまでには、長い時間がかかる可能性が高い。当面、既存の証拠を最大限に活用するための新たなアプローチが必要だろう」

Chandni Hindocha

本研究は、UCLおよびアムステルダム大学の研究者により実施され、アメリカ国立衛生研究所UCLH生物医学研究センターの支援を受けている。

医療用大麻の研究で活発なイスラエルは、退役軍人でPTSDを患った人が大麻で治癒したケースが多いようだが、これも医療的な証拠としては十分でないようだ。

高城剛氏著『GREEN RUSH』で世界各国の大麻事情が書かれているので、ぜひ読んでみてほしい。Kindle Unlimted対象だ。

PTSDとは

PTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)は、強烈なショック体験、強い精神的ストレスが心のダメージとなり、時間がたってからも、その経験に対して強い恐怖を感じるものである。震災などの自然災害、火事、事故、暴力や犯罪被害などが原因になるといわれている。

突然、怖い体験を思い出したり、不安や緊張が続いたり、めまいや頭痛が出たり、眠れないといった症状が出る。辛い体験によって誰でも眠れなくなったり食欲がなくなったりするものが、何カ月も続くときはPTSDの可能性が高い。ストレスとなる出来事を経験してから数週間、ときには何年もたってから症状が出ることもある。

退役軍人でPTSD患者が多いのは、親しい人物や尊敬していた上司が目の前で死亡することに由来する。

参照:

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