大麻とドーパミン。脳への働きとうつ病治療への期待

大麻
この記事は約8分で読めます。

大麻植物には100種類以上のカンナビノイドが含まれており、各成分が人間の脳と相互作用している。研究者たちは、こうした相互作用においてドーパミンが果たす重要な役割へ、特に注目しているようだ。

ドーパミンは脳の「報酬システム」に不可欠であり、幸福感のある作用を与えるなど『動機付け』を生み出す役割を果たしている。

このため、ドーパミンは依存症やうつ病などの行動パターンを理解するのに欠かせない。

現在進行中の大麻とドーパミンに関する研究は、大麻の使用と「精神病」や「統合失調症」を結びつける主張に光を当てる可能性があり、実際のリスクと潜在的な利益は何かを明らかにすると期待される。

ドーパミンとカンナビノイド

ここ最近、カンナビノイドとドーパミンの関係を示す証拠が増えている。

ただし、相互関係の詳細な仕組みや、長期ユーザーにとっての意味はまだ明らかになっていない。

 National Center for Biotechnology Information(国立生物工学情報センター)のウェブサイトに掲載されたイギリスの研究(2016年)では、以下のように記述されている。

「入手可能な証拠は、THCがドーパミン系へ長期的な影響をもたらすことを示している。THCの長期使用に伴い、ドーパミンの作動鈍化や、ドーパミン放出量の増加が見込まれる」

これは、ドーパミンの産生が鈍化しているため、実際には利益が減少している。長期的に同じものを使用する人には、お馴染みのパターンだ。

Cold Spring Harbor Perspectives in Medicineが2012年に発表した『A Brain on Cannabinoids: The Role of Dopamine Release in Reward Seeking(カンナビノイドと脳:報酬追求におけるドーパミン放出の役割』と題する論文は、ドーパミン放出の問題が「大麻離脱症候群」の原因である可能性があるとする研究を、いくつかレビューしている。

大麻離脱症候群は、大麻の使用をやめると以下のような症状が出るものだ。

  • 不安で神経質になる
  • 食欲と体重が減少する
  • 落ち着きがなくなる
  • 奇妙な夢を見る
  • 悪寒
  • 気分の落ち込み
  • 胃痛
  • 不快感
  • 震え
  • 発汗などの睡眠障害

つまり研究は、THC含有量の高い大麻を長期間に渡って使用し続けると、大麻離脱症候群を引き起こす可能性があると述べている。これは少し誇張されているように見えるかもしれないが、大麻はドーパミンにより調節される報酬システムを狂わせ、渇望を作り出していると考えられる。

「禁断症状は強化プロセスを通じて大麻依存に寄与すると考えられる」

National Institute on Drug Abuse(米国立薬物乱用研究所、NIDA)によると、THCが気分に及ぼす影響は、GABAニューロングルタミン酸作動性ニューロンという、2種類のニューロン(神経細胞)によって決定される。

GABA細胞は安定した状態を保つためにドーパミンの放出を阻害するが、THCはGABAニューロンの放出を阻害することができる。GABAニューロンが抑制されると、一時的に快適なドーパミンラッシュを感じようになる。

グルタミン酸作働性ニューロンが抑制されると、脳はグルタミン酸を奪われることになる。グルタミン酸はドーパミンと同様に快感へ結びついており、快感と密接に相互作用するのだ。

NIDAは、以下のように記している。

「薬物が報酬型か嫌悪型かは、2つのニューロンのどちらがより抑制されるかに大きく依存する。これは生物によって異なる」

抗精神病薬となるカンナビノイド

最近の研究で、カンナビノイドは精神疾患の治療薬になる可能性が明らかになっている。

従来の「抗精神病薬」は、ドーパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、セロトニンのような神経伝達物質の放出を制御することによって機能する。

Medical Life Sciences Newsに掲載された8月の記事は、査読済みの6つの研究をレビューした後、「これまで精神病治療を支配してきたドーパミン仮説は、脳内ドーパミンの過剰な放出が精神病症状を引き起こすと仮定できる」と述べている。

今日広く用いられている抗精神病薬はドーパミン受容体に結合し、ドーパミン産生を減少させる。これらの伝統的な薬剤に反応しない人々のために、代替治療としてカンナビノイドが研究されているのだ。

CBDは特に可能性ある『ニュータイプの精神病治療法』であると見なされており、Medical Life Sciencesは最近の研究を引用して、次のように報告している。

「従来の抗精神病薬の補助としてCBDの効果を検討すると、患者の認知、疾患、生活の質、全体的な機能に及ぼす影響へわずかな改善が見出された」

CBDがドーパミンを抑制しているのであれば、大麻使用においては少なくとも、THCが神経受容体にドーパミンを過剰放出させている可能性がある。

これは、CBDが内因性カンナビノイドシステム(ECS)のCB1受容体であるアンタゴニストであるように見える一方、THCは同じCB1受容体を活性化し多幸感を引き起こすためだ。

脳の長期的な変化

新しい治療法に期待が集まるカンナビノイドとドーパミンの関係性は、大量の大麻を使用する人、特に脳が未発達の人にとっても、危険をもたらす可能性がある。

ユタ州のブリガム・ヤング大学の研究者らによる2017年の研究は、雑誌『JNeurosci』に掲載されている。この研究では、脳幹の腹側被蓋野(VTA)に焦点が当てられている。

腹側被蓋野(ふくそくひがいや)は、ドーパミン受容体の最も重要な2つのクラスターの1つとして同定されている。研究者らは、1週間毎日THCを注射した思春期のマウスで、VTAの細胞がどのように変化したかを調べた。

研究チームは、〈正常なマウス〉と〈CB1ノックアウトマウス(CB1受容体を無効にするよう遺伝子操作したマウス)〉の結果を比較し、特にGABA細胞への影響を調べている。

その結果、「THCはGABA細胞の興奮性を急激に低下させる」ことが明らかになった。つまり、高THCの大麻株はGABA細胞を勝り、より多くのドーパミンを放出させることができるということだ。

研究チームは、『精神疾患の診断および統計マニュアル5』で「臨床的に重大な障害または苦痛をもたらす大麻使用の問題のあるパターン」と定義されている、〈大麻使用障害〉の背後にある脳のメカニズムの手がかりを推測した。

もちろん、このような分類は本質的に疑問を抱かせるものであると批評家は指摘する。「障害や苦痛」は実際に大麻を使用したことが原因なのか、それとも別の理由であるのか判別するのが非常に難しいからだ。

大麻の使用は実際に患者へプラスの治療効果をもたらしているなど、変数は数多くあり断定することは難しいのだ。

なお、アリゾナ州立大学の研究者たちによって、青年期における大麻使用の軌跡と成人期まで追跡した少年のサンプルにおける、成人の脳構造との関連を調査された研究がある。この研究では、青年期の大麻使用と脳構造の間に、関連性は無いと示されている。

大麻と医療の今後

医療 
十分な実験とサンプル数が大麻医療を決定的なものにするだろう。それまで、良し悪しを結論づけることはできない。

この研究が精神科医によってどう応用され解釈されるかは、長年にわたる大麻と医薬品への偏見を考えると、ある程度厳しい精査が必要であることは間違いない。

2014年、Proceedings of the National Academy of Sciences(米国科学アカデミー紀要)に掲載された、大麻の使用が不安解消や抑うつを促すと主張する研究について、多くのメディア(アメリカイギリスの両方)が大々的に報道した。

研究者らは、1日に複数回喫煙する大麻乱用者24人の脳と、多動性および注意欠陥障害の治療に用いられる刺激薬、メチルフェニデート(一般にリタリンとして知られる)との反応を調べた。

この試験で大麻乱用者は、対照群と比較してメチルフェニデートに対する行動、心血管、脳反応が鈍化する作用を示した。また、乱用者は否定的な感情反応のスコアが高かった。

そこで研究者らは、大麻がドーパミンに対する脳反応を阻害すると結論付けている。

ニューヨーク州立大学オールバニー校のMitch Earleywine(ミッチ・アーレイワイン)教授(心理学)は当時、このような研究は原因と結果が混同される可能性があるとして疑問を投げかけた。

アーレイワイン教授は、以下のように述べている。

「リタリン(メチルフェニデート)やその他刺激剤を投与し、ドーパミンの放出を評価しようとしても、大麻使用者がどのように反応するかについては、ほとんど何の説明もないと思います。また、研究の参加者は大麻使用へ無作為に割り当てられたわけではないため、ドーパミン反応の変化が大麻使用に先行したのか、その後に起こったのかは分かりません。もし、大手製薬会社の製品が実験室で全く同じことをした場合、リタリンや他刺激薬に関連する中毒の可能性から、人々をどのように保護するか考えているでしょう」

Mitch Earleywine

大麻に関しては賛成派と反対派で分かれることが多い。ただし、十分な研究と検証がなされてない今、断定的な結論を出すべきではない。両者共に、最新の研究結果を受け止め、事実ベースで判断していくことが大切だと思う。

参照:cannabisnow

コメント